けがれって、何が枯れたの
「けがれ」は「汚れ」とも「穢れ」とも書かれます。
こういう意味です。
1 けがれること。特に精神的にみにくいこと。よくないこと。清潔さ、純粋さなどを失うこと。また、失われていること。「―を知らない子供たち」
2 不名誉であること。名誉をけがすこと。名折れ。「家名の―」
3 死・出産・月経などの際に生じるとされる不浄。罪・災いとともに、共同体に異常をもたらす危険な状態とみなされ、避け忌まれる。この間は、神前に出たり人に会ったりするのをつつしむ習慣もあった。
ところが、元の文字はそれぞれ、けっして悪い意味ではないです。
「禾」は稲、麦、粟など穀物を、「歳」は地球の一周する時間や一年をさすとともに穀物の実りの良し悪しを、表します。
「水」は文字通り「みず」を、「于」は場所や対象を、表します。
つまり、むしろ、農業にそった言葉でさえあります。
それがどうして悪い意味を持たされてしまったのでしょう。
ここには、陰陽思想が関係していると思われます。
陰陽では、陰極まりて陽、陽極まりて陰、と言う考えがあります。
それぞれ、失敗は成功の元、過ぎたるは及ばざるが如し、のような言葉と思ってもらってもいいです。
元が悪い意味でない文字が、悪い意味になってしまったのも「過ぎたるは及ばざるが如し」ということなのかもしれないですね。
どうやら、陽極まりて陰、なので裏の意味に転じてしまったらしいです。
「けがれ」は、本来何を指したのでしょうか。
私は「気枯れ」だったと見ます。
「気」は「元気」「勇気」「病気」などの「気」です。
その「気」が「枯れ」た状態が、「けがれ」ではないかです。
「枯れ」は死ぬことです。
「けがれ」とは、「気」が死ぬことです。
血とともに生命が失われることが「死」とすれば、「出産」「月経」も「血」が出るので「死」を連想できると感じたのかもです。
死後は、腐敗し醜くなっていくので、肉体の死を意味した「けがれ」は、やがて魂の死をも、たとえとして含むようになり、意味として取り込むようになりました。
そして、不名誉となり、精神的にみにくいこと、よくないこと、清潔さ、純粋さなどを失うこと、をもしめすようになったのだろうかです。
ここまで見て、思いました。
聖書には、神が息によって命を吹き込まれたと。
この神の息が体を離れたときが死。
神の息は、気に似ている。
気とは、神の息のことだろうか。
と、です。
そうそう・・・。
そもそも、気の思想自体、陰陽由来ですね・・・。
清めの塩は、殺菌からきたと思われます。
そういえば腐敗の原因は菌。
確かに、塩は効きます。
また、陰陽で、白は死を意味するとともに、光も意味します。
穢れ払いに、清めの塩で穢れそのものに死をもたらそうとしたのでしょう。
あと、出産とかを穢れということで、昔は個室に離したのも汚いというのではなく、衛生管理の問題というか、いろいろな感染からまもるという意味もあるとおもいますよ。
意外と合理的というか、神様とか信仰と生活がリンクしていたと思います。
陰陽のような、即物的弁証法の思想は、じつはタントラやカッバーラなど古代からいくつかあるのです。
これらは言い回しは違っても、理論の中心にすえている原理は、似通っているのです。
それはおもしろいことに、弁証法を唱えた近代の三人の哲学者、ヘーゲル、マルクス、エンゲルスの掲げた三つの原理の先駆けともいえるものなのです。
三つの原理とは、これ。
「量から質への転化、ないしその逆の転化」
「対立物の相互浸透(統一)」
「否定の否定」
神秘主義の衣をまとっているために、陰陽やタントラやカッバーラなど、これらの思想がいかに奥深い科学的な顔を持っているか、見落とされているのです。
現代科学を上回る数の知識や経験に基づいて、気の遠くなるような数の仮説と実証を繰り返してきた実績は、もっと省みられていいです。
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コメント
確かに汚れや穢れの漢字自体はそんなに悪い感じしないですね。「気枯れ」はなるほどと思いました。漢字ってカッバーラだらけですね。
投稿: コテツ | 2008年3月23日 (日) 21時46分
>漢字自体はそんなに悪い感じしない
でしょ?
この字を見て、「ぃやっだ~!」なんて思うのはバッチイものと組になって印象に残ってるからですよ。
投稿: cova | 2008年3月24日 (月) 15時33分