猫多羅天女
妙多羅天女(みょうたらてんにょ)といわれる像が、新潟県にある越後一ノ宮彌彦神社の北、真言宗紫雲山龍池寺宝光院(しんごんしゅうしうんざんりゅうちじほうこういん)の阿弥陀堂に安置されているというです。
この妙多羅天女の話は、佐渡の金北山・蒲原の古津・加賀の白山・越中の立山・信州の浅間山などを舞台に展開され、モデルは実在の人物とされます。
引用すると長いからあらすじだけ紹介するので、興味があったら検索して欲しいです。
妙多羅天女は、老婆、あるいは母とあるけど老女と見ていいです。
嫉妬に狂った老女が悪鬼となり、荒々しいおこないをしてあばれ回ったが評判高い高僧に諭され本来の善心に立ち 返り神仏の道を護る天女となります。
悪人を戒め善人を守り幼い子らを守り育てることを誓ったと言うです。
みて貰えばおわかりのように、どこか鬼子母神と似たところがあるのです。
この妙多羅天女には実は妙なことがあるのです。
別名を猫多羅天女(みょうたらてんにょ)と言うのです。
猫多羅天女の話は、「猫多羅天女の事」と言う題で鳥翠台北茎の『北国奇談巡杖記』(文化4年〈1807〉刊)巻三に収められています。
これは短いので引用させてもらいます。
「ある夏の夕方、佐渡国雑多(さわた)郡小沢の老婆がひとり涼んでいた。すると一匹の老猫があらわれ砂の上でころがってたわむれはじめた。老婆もつられて猫と遊ぶこと数日、そのうちに 体が軽くなり、やがて全身に毛が生えてついに飛行自在の妖術を得た。形相もすさまじく、見る人肝をつぶし驚くうち、猫となった老婆は雷鳴をとどろかせて対岸の越後国・弥彦山に飛び 移り、霊威をふるって大雨を数日降らせた。里人は困り、これを鎮めて猫多羅天女とあがめた。年に一度、猫多羅天女が佐渡にわたる日には、ひどい雷鳴があるという」。
妙多羅天女は、悪鬼に変じたというからおそらく鬼子母神のような風貌ではないでしょうか。
猫っぽくはないかも。
名前が変えられた事からも、そう思えます。
実際に見たわけではないので、どこまでも想像ですけど。
猫多羅天女のほうは、像があるかどうか残念ながらわからないですね。
もしあれば、話からはワイルドなヤマネコっぽい姿と想像されますけど。
妙多羅天女ではモデルとなった人物があげられてるのに、猫多羅天女の方は老婆がひとりとなんてあっさりしたもんですね。
ここで興味深いのは、どちらも老女の化けたものとされることです。
老女を、人生経験豊富な女、つまり、智恵や知識が豊富な女、と見たらどうでしょう。
智恵や知識が豊富な女が摩訶不思議な力を発揮するというのが、猫多羅天女または妙多羅天女の本筋と見ていいです。
わたしは、猫多羅天女のほうが古い伝承で、妙多羅天女は仏教によって鬼子母神伝承を元に作り変えられたとみます。
つまり猫多羅天女が仏教によって、悪鬼改心話にされたと思えるのです。
この構図、どっかで見たことあります。
そう。
魔女が、キリスト教に貶められたのと似てないでしょうか。
しかも、猫がいるとこまでそっくりです。
やはり、日本にも魔女がいたことになるってわけでしょうか。
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