ペルシャと猫
私の記憶に間違えがなければ、日本の猫の三割にペルシャの猫の血が入っているという情報に接したことがあります。
明治32年、ペストが神戸で発生したとき、北里柴三郎は「伝染病予防法」に基づき、患者の隔離や全住民の検診を実施する陣頭指揮を執りました。
北里は猫のいる町や家ではペストの発生が低いことや、ネズミがペストの運び屋をしていることの気がつきました。
それで、ネズミによる感染拡大を防ぐため猫を一家に一匹飼う事を推奨しました。
このとき外国から、大勢の猫が日本にやってきました。
日本の猫の三割をしめるペルシャの血は、このときからだろうかという疑問を述べたものだったと覚えていました。
その後この日本の猫の祖先に関する情報の真偽を確かめようとしたけれど、裏が取れないでいました。
ただ、古代日本にペルシャ人が来ていたこと、そしてシルクロードの文物を豊富におさめている正倉院御物のなかでペルシャがやけに目立つことは、心の片隅に引っかかっていました。
ところが、船に関する情報から意外なことを知りました。
それは、ネズミ対策が向上するまでのかなりの間、猫がいないと荷物を積んでも出港できないという決まりがあったというのです。
この状態はかなり古代にまで、さかのぼれるらしいこともわかりました。
そしてまた、旅が長期なものであるために帰り道に耐えられない年齢に達してしまった猫たちは、目的地で放されていたようなのです。
さらに、中国でも日本でも、猫が貴重な存在であり、牛や馬より高値で取引されていたという話もあるのです。
となるとですね。
明治の、猫を一家に一匹飼えと奨励されたことが日本の猫にペルシャの猫の血が濃くなったことの理由とは、必ずしもいえないとなります。
日本の明治時代だったころ当時のイランで、日本の猫特需に応えきれるほどブリーデイングが盛んであったとは、とても考えられないからです。
おそらく、ヨーロッパあたりがこのときの需要に応えたと見ますね。
となると、明治以前の日本はむしろ、ペルシャ起源の猫は三割より多かったかも知れないとみてもおかしくはないとなります。
これらから連想される事態はこうです。
「日本海を渡る船に乗り込んだ猫は、はるばるアジアの西の端に近いペルシャからやってきて、日本で残りの猫生をすごした。」
ここで、ちょっと待った!という声もあるかもしれません。
「猫で“ペルシャ”といえば、豪華な印象のある長毛種ではないか、日本の猫とはあまりにも違う!」
ペルシャ猫のルーツはなぞに包まれているけれど、イラン高原の寒冷な気候が生んだ種ではないかという説もあります。
でも、イランで描かれる一般民衆の生活に近い猫は、案外と日本の猫に見た目は似ているのですよ。
彼らの祖先たちから、日本にむけて、ペルシャやシルクロードの文物を護衛すべく二度と故郷の地を踏むことのない長旅に出たものたちがいたのかもしれないです。
もっとも、日本に来た彼らのこどもたちから、ペルシャに向けて送り出された東アジアの文物を護衛すべく旅立ったものもいたかも。
中国や南アジアから日本に来た猫たちが、せいぜい数回から一回ぐらいだったかもしれないのに対し、ペルシャの猫たちは相当何回も日本に派遣されたことでしょうね。
そして、正倉院に見られるような膨大なペルシャの文物などのシルクロードコレクションと、日本の猫の三割に達する子孫が残ったのかもしれません。
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