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オリーブ

聖書には新約、旧約あわせると、「オリーブオイル」は140カ所、「オリーブの樹」はほぼ100カ所で言及されているのですと。

ま、よくもまあ数えたものですね。

さらに、オリーブをイスラエルにたとえる個所が、聖書には何個所かあります。

オリーブは、有史以前からシリア・メソポタミア・イスラエルなどに自生していたと考えられます。
原産は中近東で、トルコ南部の地中海に面した地域で、トルコからアフリカ東北部の沿岸にかけて自生していました。
中近東に始まったユダヤ教とキリスト教の聖典である旧約聖書や新約聖書にオリーブが出てくるのは当然と言えば当然といえるわけですね。

でも、なんでまた、聖書はこんなにオリーブを登場させるのでしょうか。

ちなみに、エジプト人は、ピラミッドの石を運ぶ際、潤滑油としてオリーブオイルをもちいました。

オリーブオイルは、モクセイ科の常緑樹オリーブの実からとれる油なのです。
けど、じつはオリーブを意味するアラビア語が、オイルなのです。
実を絞るとすぐに油がとれるオリーブは、人類が最初に手に入れた油だったのです。

オリーブオイルは、種じゃなく実を絞るので、オイルといってもジュースに近いのです。
このオリーブはジュースである以上飲めるわけで、実際欧州の産地では飲まれているようです。

ギリシャの方とか行くと、オリーブオイルを入れる大きい容器があります。
そして、それについてる蛇口をひねって料理にドローってかけているそうです。
気前よく使われるのも、ジュースとして見られているからでしょう。

そしてぶどうと並んで、もっとも古くから栽培されている植物でもあります。
6000年前には、クレタ,キプロス,シリアなどでさかんに栽培されています。
フェニキア人によって、ギリシア,南フランス,イタリア,南スペインなどにも広く伝えられました。
話が聖書にはいくつもでてくるオリーブの学名は、Olea Europaeaです。
モクセイ科の常緑樹で、高さは3~10メートルになります。

四季を通じて緑を絶やすことのない、「オリーブグリ-ン」と呼ばれるオリーブの葉の色は「常若(とこわか)」を思わせます。
「銀葉」と呼ばれる秘密は、葉の裏面にあったのです。
オリーブ葉の表面はつややかな濃緑色で、裏面には白い細毛が密生して、まるで、正月の裏白です。

「太陽の樹」と呼ばれるオリーブ樹は、生命力が強く、樹齢が長いのが特徴です。
スペインなどでは、樹齢500年を超える古木が今なおたわわに実をつけている姿を見かけるそうです。
生命力のシンボルだけあって、千年以上生きつづけるものもあるオリーブの木は、4年から8年で実をつけ始めます。

古代オリンピックでは、選手は筋肉疲労を回復するためにオリーブオイルを塗ったとか。
クレオパトラが美しさを保つために、オリーブオイルを使っていたともされ、貯蔵や交易のためのオリーブ壷のアンフォラも遺跡から多数発掘されているのです。

脂肪が酸化した過酸化脂肪酸は体に悪いけれど、最近の研究では、オリーブ葉に含まれる成分に抗酸化作用が認められるという報告もされました。
オリーブオイルの主成分はオレイン酸で、その特徴は酸化しにくいことです。
リノール酸の12倍,リノレン酸の25倍酸化しにくいのです。
オリーブオイルにはさらに抗酸化成分であるビタミンK、A、E、ポリフェノール、D、カロチンが多く含まれるので、老化を遅らせる効果があります。

油は、酸化しにくいものがよいのは当然です。
さらに抗酸化成分は老化や病気のもとになる、悪名高き活性酸素の働きをおさえるのです。
また酸化に強い性質から美肌を作るとされ、古くはローマ時代から美容クリームとして使用されてきました。
オリーブ葉は美しいだけでなく、効用もあるのです。
太陽と長寿と薬効とくると、まるでイエスみたいです。

1世紀頃の、全ての富と権力が集中したローマ帝国では、オリーブオイルは「液体の黄金」と呼ばれ、取り引きの中心となっていたようです。
金は王の象徴だけど、不変の輝きを放つ光の神でもあるようです。

オリーブは、ローマ帝国の都市で、祭祀、灯火、食用、化粧品、また鎮痛作用のある軟膏として医薬品に,などにひろく使われるようになりました。
そして、貴族がオリーブ農園を各地に作るようになり、さらに広い地域で大量に生産されるようになりました。

大航海時代にはアメリカや南アメリカに、その後も全世界に広がり、現在、オリーブ樹は世界には約8億本です。
スペイン・イタリア・ギリシャなどの地中海沿岸地方だけでなく、世界各地で栽培されています。
もちろん地中海付近の国々が上位を占めます。
中国も意外と多く、約2,000万本だそうです。

日本にオリーブ樹の栽培が伝わったのは、幕末とか。
明治時代には、日本でも栽培されるようになりました。
今でも地中海地方に気候が似ている小豆島周辺で、オリーブオイルが作られています。
世界には、700種類以上のオリーブがあるとされます。
日本で栽培されるのは、主にミッション、マンザニロ、ネバディロ・ブランコ、ルッカ、です。
今では、気候が適した香川県小豆島と岡山県牛窓町が日本の二大産地として知られています。

5月半ば頃、オリーブのつぼみが少しずつ膨らみ、5月終わりから6月半ばにかけて、モクセイによく似た小さな白十字の花を咲かせます。
これまた、白き光のイエスみたいです。
9月から11月にかけてオリーブの実はエメラルドグリーンから黒紫色に色づいていくです。
たわわに実るその姿は、まさに「豊穣の樹」で、ここは、豊受大神のようです。

でも、オリーブ果実は渋みや苦みが強いので、小鳥や動物もついばむことがほとんどないです。
オリーブ果実が宝石のように輝いて見えるのも、渋抜きをして塩漬けや酢漬けに加工したり、油を搾ったりする技術があってこそです。
健康を重視する昨今では、地中海沿岸地域での心血管障害の発病率が低いことに注目しました。
その食生活の重要なポイントであるオリーブオイルの効用について研究がすすめられているのです。

現在平和のシンボルとして国連のマークにデザインされているオリーブは、ギリシャ神話や聖書には、オリーブ樹は平和や豊かさの象徴として多数登場します。
ノアの方舟に、鳩がオリーブの小枝をくわえて戻ってきたため、洪水がひいたことがわかった話が有名です。
ここにも、イエスがほのめかされているのでしょうか。

また、ポセイドンが戦争に役立つ馬を、アテナが暮らしに役立つオリーブを発明し、アテナが勝ってギリシャのアテネの所有権を得ました。
古代オリンピックでは、勝者に与えられたのは月桂樹ではなくオリーブの冠だったともいわれます。
さらに、樹の王を決める会議で、オリーブは「暮らしの中で役に立ちたい」と言い、王の座を辞退した話もあります。

確か新約聖書にも、油壺を持っていた女性がいたような気がします。

涙でイエスの足を洗い、髪の毛でそれを吹き、香油を塗って、足に接吻をした女性ですね。
おそらく彼女のそばには、油壺があったことでしょうね。
となると、油壺を持った女性として描かれても不思議ではないです。

この女性は罪深きものと記され、イエスによって7つの悪魔を追い出してもらったマグダラのマリアや、姦淫の罪を犯しイエスに救われた女と、しばしば同一視されるようですね。

この同一視のうらに、バッカスの酒宴もどきの大祭を主催する女神バステトのイメージがある可能性は否定できないかも。

バステトの大祭では、男性はもとより女性もかなり奔放で開放的に振舞ったようなのです。

聖書的倫理からみて、問題が多いと見られていたとしても、残念ながら不思議ではないと思えるのです。

ところで聖書に出てくる頭につけたりする油って、オリーブオイルなんですかね。

聖書に出てくる頭につける油は、当時彼らにとって名前を言うまでもなかったもの、というわけでしょうね。
オリーブを意味するアラビア語がオイルである以上、アラブと同祖のユダヤ=イスラエルの民にとっても同じ事は言えるかもしれません。

となると、聖書の油は特に断りがない限り、オリーブかも。

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コメント

オリーブの素晴らしさがとてもよく伝わりました。ありがとうございます。

>ところで聖書に出てくる頭につけたりする油って、オリーブオイルなんですかね。

そうみたいですね。
聖典ではオリーブ油は御霊の象徴として使われています。頭にオリーブ油を注ぐのは御霊が宿る事を表しているそうです。

投稿: コテツ | 2008年4月22日 (火) 09時25分

オリーブオイルの、あの色も「御霊の象徴」とされたことと、何か関連ありますかねえ。

頭に油って言えば、日本じゃ、椿油ですね。

なんだか、似てますねえ。
食用にもなって、頭にもつけるとこ。

投稿: cova | 2008年4月22日 (火) 14時58分

オリーブ油の色は黄色または黄金っぽく見えるので、光のイメージがあるのかな。
御霊はキリストの光とも呼ばれます。

投稿: コテツ | 2008年4月22日 (火) 15時45分

陰陽では五色は青. 赤. 黃. 白. 黒。

青は東、赤は南、黃は中、白は西、黒は北、つまり中心に来るのが天でも地でも黄なのですね。

神の座にふさわしい色といえましょう。

あと、黄といえば黄道。
黄道とは、天球上における太陽の見かけの通り道のことでしたね。

投稿: cova | 2008年4月22日 (火) 16時20分

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