天狗 その1
一般的に伝えられる天狗の印象、それは、こうではないでしょうか。
鼻が高く赤ら顔、山伏のような装束に身を包み、一本歯の高下駄を履き、葉団扇を持って自在に空を飛び悪巧みをする。
このような天狗は一般に、鼻高天狗と呼ばれます。
ところがなぜか「天狗」は、「天の狗(いぬ)」という、みんなが抱いている印象とはかけ離れた意味の言葉なのです。
犬といえば狛犬・・・
それと比べたら、天狗は人の顔に近いですよね?
またイメージが変わりますね。
なんで、犬と結びつくか、その由来を探ってみたいですね。
猫も長生きすると尻尾が割れて妖怪になる、と。
犬はそういうニュアンスの伝説を、ワタクシ寡聞にして知りませんですが。
その辺の延長で、天狗・・・では無いんですね。
イヌとテング、一見結びつかないものが結びつく背景、奥は深そうですね
いまでは天狗の典型とされる鼻高天狗は、登場が意外と新しく中世以降とされます。
せいぜい遡っても、室町あたりのようですね。
このような天狗の直接の原型は、たとえば『今昔物語集』に見えるこのようなものであろうとされます。
空を駆け、人に憑く「鷹」と呼ばれる魔物や、仏教の、顔は天狗、体は人間で、一対の羽を持つ「天魔」と呼ばれる魔物。
え?仏教でいう天魔は、なんとなく天使っぽいってかです。
恐らくこの「鷹」「天魔」から室町初期以降の変化したものが、鼻高天狗の原型かも。
室町時代成立とされる御伽草紙『天狗の内裏』の、鞍馬寺の鞍馬天狗の容姿が、その初期のものと考えられるそうです。
けれど私には、平均的日本人より鼻の高い修験の目撃談が誇張されて混入していると思われます。
天狗は、元来は中国の物怪であるという説があります。
天狗は、その名の示すように「天かける獣」とされます。
中国の奇書『山海経』西山経3巻の章莪山の項には、この記述があるそうです。
「獣あり。その状狸の如く、白い首、名は天狗。その声は榴榴の様。凶をふせぐによろし」
この天狗の正体は、流星または彗星の尾の流れる姿なのです。
その尾を引く姿のため天狗は天狐、意外なところではアナグマに例えられたのです。
『山海経(せんがいきょう)』などの記された当時、「狸」とは里に出没する獣全般を指す言葉であったです。
山海経とは戦国時代から秦・漢期にかけて徐々に付加執筆されて成立した中国最古の地理書です。
狸については古代中国ではネコ科の動物で、とりわけ山猫や野性化した家ネコなどを総称したものという指摘があります。
古い中国の文献に、こうあるらしいです。
「狸、伏獣。」
伏獣は前脚を揃えて身をかがめ獲物を狙う猫特有の攻撃姿勢です。
「狸者狐類。狐口鋭尾而大。狸口方而身文。黄黒彬々。蓋次於豹。」
黄色と黒の斑が並んでいるという身体的特徴からも、タヌキとは考えられないですね。
ちなみに、古代中国では、日本で言う「狸」は「狢」と表記されるようです。
現在中国でも、タヌキの動物学的標準名は「狢」だそうです。
ついでにいうと、「狢」はいまではアナグマをさすというから、ここで天狗とアナグマがつながるわけですね。
もっとついで、現代中国ではタヌキは「狸」、ネコは「貓」と表記されるそうです。
けど、中国のYAHOO『雅虎』で画像検索すると「狸」でけっこう「猫」出ます。
パンダが「熊貓」も出るけど、「熊狸」も出ます
だったら、なんで「天狗」つまり「天の狗(いぬ)」で、「天狸」や「天猫」でないのかは謎です。
猫の顔は猿とならんで、あるいは猿以上に人っぽいので、「狗(いぬ)」が選ばれたのかもという憶測も成り立つです。
もっとも、憶測なら、いくらでも言えそうだです。
日本で初めて天狗が登場するのは、『日本書紀』の634年の記述とされます。
怪音をたてて空を飛来するものを、「流星にあらず、これ天狗アマキツネなり」と呼んだという記載があります。
平安時代の天狗は『山海経』の天狐によく似ているので、やはり彗星あるいは流星を指したと考えられます。
『平家物語』では、こうあるといいます。
「人にて人ならず、鳥にて鳥ならず、犬にて犬ならず、足手は人、かしらは犬、左右に羽根はえ、飛び歩くもの」
この狐が連想されたり「かしらは犬」に思えたあたりが、「天狗」つまり「天の狗(いぬ)」の名の由来とも想像できそうですね。
木っ端天狗は、河童天狗ともいわれ、河童もいろいろ動物と結びつきますね。
河童との接点どころか、狸が登場、その狸も、古代中国では山猫や、野生化した猫、ですねえ。
女性神とされる天照大神、もっとむかしは男性神の天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊(あまてる くにてる ひこ あめのほあかり くしたま にぎはやひ の みこと)といわれますから、日本と古代エジプトの神の世界はさらに似てきますね。
あはは~沢山動物が登場でむちゃむちゃ面白いですね。
私もあのテングがどうして天狗なのかずっと気になっていたんだけれど。
こういろいろ考えると面白いですね。
狸も狗も人間にとってはかなり身近な獣の言い方ですよね。
それと、天狗が彗星という考え。
日食や月食が恐れられていたように、尾を引く星は古代とても恐れられていたんですねえ。
手や足は人、かしらは犬…犬頭ときたら、わたしゃ死者をつかさどる神アヌビスを連想するです。
ただ、アヌビスに羽根はない、けどですね。
でも、日本と古代エジプトには、太陽神を中心とした動物神をふくむ神々の世界を展開するという、奇妙な共通点があるのですよ。
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