近接場光ってどんな光?
エネルギーを持つが、その物体を離れてほかの場所へ伝わることはできないという奇妙な光があります。
さらに、眼では直接見ることができないという不思議な光です。
この変な光の名前は、「近接場光(きんせつばこう)」です。
私たちが知っている通常の光とは概念が異なるとして、いま注目されています。
この近接場光、私たちの身の回りでも、ごく当たり前にあるというのです。
近接場光とは、物体の表面にまとわりつくように存在する光だからなのです。
ナノスケールといわれる、ものすごい小さな点の上であればどこにでもあると言います。
あなたの目の前にある机の表面にも、あるそうです。
ナノスケールとは、ナノといわれる単位の大きさと言う意味です。
ナノ(nano, 記号:n)は、SIと略される国際単位系 における接頭辞の一つなのです。
SIとは、フランス語のLe Système International d'Unitésの略です。
英語の、The International System of Unitsにあたるです。
メートルなどの万国共通な単位が、フランスで生まれたのでフランス語の略が採用されているのです。
ナノは、基礎となる単位の10-9倍の量であることを示します。
10-9倍は、10のマイナス9乗倍と読み、0.000 000 001倍、十億分の一という小ささなのです。
それで、1nm(ナノメートル)は 0.000 000 001メートル、つまり十億分の一メートルという、ものすごい小ささです。
光の波は「光波」と言われ、この光波の波長より狭いところでは、光さえも身動きが取れなくなるのです。
光の波長の単位はナノメートルなので、大きさがナノメートル単位の場所では窮屈というわけですね。
光ファイバーを使った、光の花束みたいな飾り、見たことないでしょうかね?
光ファイバーの直径が波長より小さくなると、どうなると思いますか?
波長分の長さを、進行方向に確保することができないのです。
波のかたちをとることができなくなるので、光と言えども身動きができなくなって、進むことができなくなるのです。
太い光ファイバーを次第に細くしていき、光の波長以下まで細くすると光は透過できない、例えて言えば、その先は光といえど進入禁止というわけです。
光の波は、髪の毛よりも細い光ファイバーでも、その中を自由に伝わっていくことができるです。
それは、光ファイバーの直径が光の波長よりも大きいからです。
では、光ファイバー内を伝わる光を考えてみるのです。
光ファイバーは、石英でできた高屈折率の直径10~50nmのコアを、低屈折率の直径125nmクラッド層で包んだ、2重構造の光伝送用の直径約0.1mmの線材といわれる位細いガラス棒なのです。
コアの部分で光が屈折しながら進みやすいように、反射板にあたる役目をするクラッド層で包むわけです。
中学理科のレベルでは、全反射では入射点と反射点は、「同じ」とされています。
それで一般には何ら問題はないけど、本当は、入射点と反射点は光の波長ほどずれているのです。
全反射のとき、入射した光は、少しだけ外にはみ出し、外側を波長の長さほど回り道してから反射点に達するのです。
そして、あたかも1点で反射しているかのように反射光が出てくるです。
光が完全に反射、つまり「全反射」する場合でも、入射点と反射点が完全に一致していないので、はみ出す光が発生するのです。
低い屈折率で、光がはみ出すとき外に漏れ出す分を最小限に収めて効率よくファイバーに光を通す役目をするのがクラッド層の役目です。
光ファイバーの先端からは、光がしずくのようになって少しはみ出ているのです。
この外へと、はみ出した光が「近接場光」です。
光は、このように、はみ出す性質をもっているのです。
近接場光は、ナノスケールの構造がある場所に、レーザーを当てるなどして発生させることができるのです。
光の大きさもナノスケールであるため、ナノテクノロジーの分野を中心に応用しようと研究が急速に進んでいます。
ナノテクと略されるナノテクノロジー (nanotechnology) は、物質を十億分の一メートル、つまりナノメートルというの領域で、自在に制御する技術のこと。
「ナノテクノロジー」という用語は、1974年に元東京理科大学教授の谷口紀男が提唱した用語だそうです。
物質を原子レベルの大きさで制御しデバイスとして使うという考えは、リチャード・P・ファインマンが1959年におこなった講演にすでにみられているといいます。
デバイスは、回路、特に電子回路やシステムの構成単位です。
トランジスタ・IC・LSI などはデバイスの代表例で、その機能を果たす手段により電子デバイス・半導体デバイスなどとよびます。
現在注目されているナノテクノロジー分野では、ナノメートルかそれ以下の世界を観察する必要があるのです。
ところが、光は波なので波長があり「回折限界」があるのです。
「回折」とは、光の波が一見到達不可能であるように思われる物体の後ろのような領域まで回り込んで伝わってゆく現象を指します。
回折限界とは、回折現象のため光の波長以下の物質を扱えないことです。
光を使う一般の顕微鏡で観察することができない限界が、皮肉にも光の波長で決まってしまうのです。
この顕微鏡で見える限界を、分解能と言います。
接近した二点を、どの程度まで間隔を小さくしても二点として見分けることが出来るかが、分解能の高さを示すことにつながると言うわけです。
可視光線を使う光学顕微鏡では、可視光線の波長によって理論的に100ナノメートル程度に制限されており、ウイルスのような100ナノメートルより小さな対象を観察することはできないです。
ウィルスの大きさは小さいものでは数十nmから、大きいものでは数百nmのものまで存在しているのです。
すべてが一般の光学顕微鏡で見えないと言うわけじゃないけど、はっきり見えないですね。
分析や検査や試験に用いるサンプルを、試料と言います。
試料を、どのくらいまで細かいところまで、どのくらいまで小さなものまで、調べられるかは分解能で決まってしまうのです。
一般のレンズの限界を超える技術として、利用されてきたのが電子顕微鏡です。
電子顕微鏡とは、電子を光の代わりに使う分解能の高い顕微鏡です。
理論的には、分解能は0.3ナノメートル程度にもなる、小数点の後ろに9個の零が並ぶ、つまり百億分の一メートルと言う小ささです。
現在、高分解能の電子顕微鏡を用いれば、原子レベルの大きさのものを観察や観測をすることが可能なところまできています。
電子顕微鏡は、物理学、化学、工学、生物学、診断を含む医学などの各分野で広く利用されています。
ただ、電子をつかうために真空が必要で、無生物や生物の死んだ姿しか観察できないとか、電子を当てると壊れてしまう脆いものは観察が難しいなどの弱点もあります。
そこで「近接場光」が使われている顕微鏡は、ナノテクノロジーで活躍することになるです。
電子顕微鏡でしか見られなかったような極微小な物体を、質を変えることなく動きや性質までとらえたいという願いに応えた顕微鏡。
それが近接場光を用いる、「近接場光学顕微鏡」なのです。
近接場光顕微鏡は、基本的に光を使うので、動きがあるものや、壊れやすいものも、調べられると言うわけです。
分解能は、電子顕微鏡に負けるです。
それでも、真空にしないでいいので、生物から取り出した試料の観察や観測が出来るのと、調べる対象が壊れる心配がないのは、大きな利点です。
これまでの光学顕微鏡では見れなかった光の波長以下の小さなものでも、近接場光を利用すると、見ることができるようになるのです。
近接場光顕微鏡は、近接場光を物体に当て散乱する様子を横から観察するのです。
ナノテクノロジー研究用の顕微鏡には、さまざまなタイプが開発されています。
さまざまなタイプの中でも、近接場光顕微鏡は光を利用した顕微鏡なので、試料の情報を豊富に得られる点で優れています。
この特殊な光は顕微鏡以外にも応用されつつあり、研究が進んでいます。
光のエネルギーを利用して加工する「リソグラフィー」の分野でも、近接場光を駆使して数十ナノメートルの極細の線を刻むことが可能になりつつあるのです。
リソグラフィ(lithography)は、一般には印刷技術の石版印刷をさしています。
リトグラフィとも呼ばれ、以前は石灰岩などの巨大な石に描いていたため石版画あるいは石版印刷術とも呼ばれるが、近年は扱いやすいアルミ板を使うことが多いそうです。
ここでいうリソグラフィとは、フォトリソグラフィ(Photolithography)の略称です。
フォトリソグラフィは、感光性の物質を塗布した物質の表面を、パターン状に露光する像様露光などともいわれるパターン露光で、露光された部分と露光されていない部分からなるパターンを生成する技術です。
主に、半導体素子、プリント基板、印刷版、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネルなどの製造に用いられるです。
近接場光のおかげで、高い密度の回路が作れるというわけです。
これまで以上に小型で高性能な、電子基盤が可能になり多機能化や高性能化がより進むのです。
半導体製造技術では、微細な加工ができるようになり、極小の高性能デバイスが出現する可能性があるのです。
この近接場光で細かい加工が可能になる技術は、他への応用研究も進んでいます。
たとえば、CDやDVDなどの光記録媒体に応用して微細な読み書きができるようになれば、記憶容量が飛躍的に向上するかもしれないのです。
ハードディスクに利用できれば、テラバイトなど、コンピューターの飛躍的性能向上が展望できるです。
一般的にテラ(tera, 記号:T)と言う接頭辞は10の12乗倍をさし、一兆倍をさします。
でも、コンピューターの分野では、二進法の関係でテラバイトは1,099,511,627,776バイト、おおよそ1兆990億バイトであり、1024ギガバイトを意味するからややこしいです。
すでに、近接場光を使用するDVDは作られていて、ブルーレイディスクを上回る記憶容量はあらたな用途が期待されるです。
高性能レンズの表面の微細な凹凸を近接場光で磨く技術も、研究開発されつつあるのです。
これは、大雑把に言うと、ガスを満たした中にレンズなど表面を磨きたいものをいれ、光を当てるだけという、信じられないほど簡単な仕組みです。
装置に満たしたガスと、加工したい表面を近接場光が結びつけることで、可能となる研磨法です。
ナノスケールの出っ張りがあると、出っ張りの先端に近接場光が現れガスが結びついて、どんどん研磨されるです。
ナノスケールの出っ張りが消えると、近接場光は出なくなってしまうのでガスは取り付く島がなくなるので、研磨が終わると言うわけです。
不思議な光、近接場光。
光の可能性は、まだまだ、深く、広いのです。
聖書には、こうありますねえ。
光あれ、すると光があった
この光の中に、近接場光も入ってたでしょうかね。
え?
天地が現れる前だから、このときあるわけない?
ごもっとも…ですねえ。
神は細部に宿りたもうって、言う言葉ありますね。
ここに居られますかねえ。
知らない?
実は私もわかりません。
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