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猫とコーキシン

前に新聞で読んで、 「コーキシン」っていうのが妙に頭に残ってたのです。

そうしたら、独立行政法人理化学研究所と国立大学法人岩手大学が、2006年10月21日に面白いプレスリリースをだしているのを見つけました。

そのなんとも好奇心をそそるタイトルというのが、これです。

ネコの尿臭の原因となる化合物を生産するメカニズムを解明
- タンパク質「コーキシン」が臭いのもと「フェリニン」の生産を酵素として制御 -

理研フロンティア研究システム(玉尾皓平システム長)生体超分子システム研究グループの鈴木明身グループディレクター、宮崎雅雄基礎科学特別研究員と岩手大学農学部の平秀晴教授、山下哲郎助教授のグループによる研究成果です。

匂いは動物の様々な生命現象に関わっています。
たとえば、動物が食物を探すとき、仲間や敵を識別するときの重要な指標となっています。
匂いってのは、繁殖能力や生殖行動を制御する機能も持っているってことです。

その仲間や敵を見分けたり、繁殖を制御している匂い物質を、フェロモンと言います。
フェロモンとは、動物や微生物が生産して体の外に分泌する化合物で、同じ種の他の個体の行動や生育に影響を与える生理活性物質の総称です。
フェロモンと見られている物質のほとんどは空気中に散らばりやすい揮発性で、極めて低い濃度で活性、つまり効き目を示す場合が多いです。

動物の生活や繁殖に欠かせない嗅覚コミュニケーションがどんな分子メカニズムを持ってるか、生命科学者も興味津々ってわけです。 

独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と国立大学法人岩手大学(平山健一学長)は共同で、ネコの尿中に大量に存在している「コーキシン」というタンパク質が、ネコ特有な尿臭の生産メカニズムに重要な役割を果たしていることを解明しました。

たいていの場合、腎臓は、血液をろ過することにより、生命活動によって生じた老廃物を尿中に排出させるという非常に重要な生理機能を担っています。
一方、血液中のタンパク質は、老廃物とともにいったんは腎臓でろ過されるけど、ふたたび腎臓内に吸収されて再利用されるため、健康な動物の尿にはほとんど排泄されないです。
哺乳動物の尿に大量のタンパク質が排泄されるタンパク尿という症状は、腎臓の異常を示す兆候として考えられています。
  
しかし健康なネコやその近縁のネコ科動物の尿に中には生理的に大量のタンパク質が含まれているという、珍しい現象があります。

研究グループは、このネコの仲間に特有なタンパク質の多い尿に着目し、その原因を調べる研究を行ってきました。

そうしたら、ネコの仲間の尿に特有なイオウを含むアミノ酸の一種である「フェリニン」という化合物が作られるときに、ネコの腎臓で合成され尿中に大量に放出されるタンパク質に大事な役割を果たしているものがあると突き止めました。

フェリニンは約50年前に発見されたアミノ酸の一種で、ネコやその近縁のネコ科動物の尿に独特の臭いの原因になり、ネコのなわばりを示す臭い物質や、異性を引き付けるフェロモンの前駆体にもなっていると考えられています。

前駆体とは、『前の段階の物質』ということで、『原料』とほぼ同じ意味で使われている科学用語です。

ネコの尿に含まれる揮発性の臭い成分の分析を、ガスクロマトグラフ質量分析計でやって見たそうです。
ガスクロマトグラフ質量分析計とは、わずかな量でも揮発性の有機化合物を細かく分けられて、分けられたあとの試料とよばれる有機化合物の質量を調べる装置で、多くの成分のまざったわずかな試料から個々の分子の種類と含まれる量を調べることができるです。

分析するとネコの尿に約100種類もの揮発性物質が検出され、その中にフェリニンが分解されて生じる3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールとその類似物質が含まれていることが明らかになったのですと。
ネコの尿に特有の臭いは、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールなど、いわゆるブタンのなかまのしわざだったってわけです。

なんでネコの尿にタンパク尿が出ちゃうのか興味を持っていた研究グループは、ネコの尿に分子量が約7万のみなれないタンパク質が大量に存在していることを2003年に発見しました。

分子量とは、分子の大きさってこと、大きな数字の分子はそれだけ大きいってわけです。

このフェリニンを作る仕事をしているタンパク質は、「カルボキシルエステラーゼ」という酵素によく似た構造をしてるので、「コーキシン(Cauxin)」と命名しました。
酵素(こうそ)とは、生化学反応すなわち生き物の体の中でおきている化学反応で触媒の役をする物質のことです。。
コーキシンは、腎臓の尿細管という組織の細胞で合成され尿に分泌されるということが明らかになったのです。

コーキシンというネーミングは、このタンパク質の構造と腎臓という泌尿器で作られる特徴をあらわしたCarboxylesterase like urinary excreted proteinの略語と、日本語の「好奇心」という言葉に引っ掛けたものです。

腎臓では、血液中の不要物が水分とともにろ過されて原尿という液体が生じるです。
コーキシンを合成している尿細管とは、原尿中の水分やブドウ糖、アミノ酸、塩分等を再吸収するための組織がチューブ状の構造をしたものです。
原尿は尿細管を通った後、不要物が濃縮された状態となり尿として排泄されるです。

一般に生体内で不要になったり、古くなったりしたタンパク質は、そのまま体外に排泄されるのではないのですよ。
細胞の中でタンパク質の構成単位であるアミノ酸まで分解され、新たなタンパク質を合成するための材料として生体内で再利用されています。

こうした常識を覆すコーキシンは、腎臓の尿細管の細胞で作られた後、直ちに尿の中に分泌されていることから、尿中でなんらかの生理機能を果たしていることが考えられたのです。

調べてみると、性成熟しているネコの尿に含まれるコーキシンとフェリニンの量は、未去勢のオスネコで著しく高く、去勢したオスネコやメスネコで低いことが明らかになっました。
次に、生後約5ヶ月間、仔ネコの尿の中に排泄されるコーキシンおよびフェリニンと前駆体、つまり原料となる3-MBCGの量が成長に伴ってどのように変化していくか調べました。

するとこのような結果が出たそうです。
(1)コーキシンが尿に検出されない生後3ヶ月未満のネコの尿には、フェリニンの前駆体である3-MBCGが存在するにもかかわらずフェリニンが認められない
(2)生後3ヶ月後以降のネコの尿にはコーキシンとフェリニンがほぼ同時期に尿の中に現れる
(3)月齢とともに非常によく似たパターンで両者が徐々に増加している

これらの実験結果により、コーキシンはフェリニンの前駆体である3-MBCGを尿中で分解してフェリニンを生じさせる酵素として働くことがはっきりしたのです。
 
今回の理化学研究所と岩手大学による研究は、尿中タンパク質が、ほ乳動物の種特有な臭い物質の生産に関わっているということを解き明かした世界で初めての報告となり、匂いを介した動物の嗅覚コミュニケーションの分子メカニズムを解明するための新たな知見が得られたのです。

少子化・核家族化が進みストレスの多い現代社会でペットに安らぎを求める人が多くなり、家族として迎えられるネコは年々増加しています。

しかしネコ独特の強い尿臭は、共に生活する上で大きな障害になっています。

この研究が元となって、コーキシンの合成を抑制させることや、コーキシンの生理活性の阻害剤、ようするにコーキシンが匂いのもとのフェリニンを作れないようにする薬を開発することにより、飼い主や近隣の人を悩ませているネコの尿臭問題を解決できると期待されるのです。

今回も長いです。
わかりますか。

 最初と最後しかわかりませんでした。
 中盤はさっぱり。
 
 要するに、 こういうことでしょうか。

 猫やその近辺の動物は、他の動物と違って、健康であっても蛋白を多量に含む尿を出す。
 これを調べていった結果、たんぱく質の分解・再合成における常識が覆された。
 同時に、動物の嗅覚コミュニケーションに対する、新たな知見が得られた。

 あるいは、これですか。
 新たに見つかった、猫の尿から検出された、たんぱく質の名前に、一部の科学者が面白がって、好奇心という単語に引っ掛けて「コーキシン」と名づけた。

最後がわかってくれれば十分です。

中盤は要するに、そういうことです。
ネコの仲間の尿に含まれるタンパク質に、これはいったいなにかという好奇心がわいたから調べたのですから。

ネコのトラブルのなかで、あの匂いはどうにもならんですもの。

この研究がきっかけになって、なにか手が打たれることになって欲しいです。

 猫のおしっこ臭を消すには、現在販売されている既成の製品ではムリなようです。

 コーキシンが匂いのもとのフェリニンを生成できなくする薬の開発を、期待します。

 現時点では、生成されてしまった尿臭を消臭するしかないわけです。

いつころ開発できるかも、好奇心がそそられますねえ。

 名前がコーキシンとは!!!
 いやあ、ユーモアがわかる人なんですねえ。

 確かに猫砂とか、色々開発されているけれどね。
 
 元がわかったからには、元から断つ!という製品が出てきそうですね。

出来れば日本が、作ってほしいです。

遊び心のネーミングってことでは、一般にはあまりなじみがないと思うけど、日本でも高エネルギー物理の研究施設にトリスタンなんて名前をつけてます。

日本で作った小さな粒子同士をぶつけておきる現象を調べる施設ということでTransposable Ring Intersecting Storange Accelerators in Nipponの略とこじつけて、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の、トリスタンと名づけたらしいです。

物理屋さんには、比率が作り出す美の感覚が感性にあうのか音楽好きが多いようですね。

 へえ、それは面白い!
 ワーグナーなんか、特に物理屋さん、好みそうだし。

 今、二匹の猫とすんでいます。
 以前一匹だけの時は、ほとんど匂いがなかったのですが。
 もう一匹がやってきてから、少しですが匂いを感じるのです。
 
 これって、もしかすると「コーキシン」の含有量が多いってことになるんでしょうか。
 
 猫同士でも、匂いを敏感にキャッチしているようです。

 猫って、体臭はほとんどないのに、排泄物はキョーレツに臭かったりするもんね。

 子供の頃一時飼っていたシャムの雄が、何故かテレビの裏に集中的にマーキングしてねえ。
 あの独特のイガイガ臭にはマイッタ記憶が・・・。
 
 何でも研究されているんだなぁ~と、感心。
 
 でも猫飼いとしては、同じ尿の研究でも猫に多い腎臓病を解決する方向の成果を望んだりも致します…。

腎臓病ですねえ。
対策や治療法、難しいとは思うけど研究進んで欲しいです。

猫の匂いって、関心高いですね。

コーキシンは、匂い物質ができるとき働く酵素なので、匂いに含まれるとか言うことはもちろんないです。

ただ、働きの活発さには猫によっても差はありそうですねえ…。

 わからんけど、だしてるんやねえ、猫。

 うむ、面白く聞きました。

これでも、説明が長くなってしまわんよう、プレスリリースの内容から関心を持ってもらえると思える範囲に絞ったのです…。

 カルボキシル基だった。

そのようです…。
わからんなりに、こんなこともあるか程度に感じ取ってもらえたでしょうか。

 うちの猫は、まだ去勢していないので、 
 難しいけど興味深く聞かせていただきましたよ。
 
 早く開発されることを、心より願っております…。

猫の匂いって、悩ましいのですねえ。

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