科学者の常識とは?
1989年12月19日の朝日新聞に、こんな記事があったのを覚えていらっしゃるでしょうか。
右回りのコマは軽くなる
「コマを右回転させると、コマの重さが回転数に比例して軽くなる」「左回転だとその現象は見られない」とする実験データを論文にまとめ、米国物理学誌の「フィジカル・レビュー・レターズ」に発表する。
多くの人は、その後の追試が否定的だったという報道を聞いて、実験結果は間違えだったと思ってしまったようです。
だって、報告したのも追試したのも、専門家でしょう。
ここに、落とし穴があるのですよ。
どこ?
どういう条件下で、「右回りのコマは軽くなる」という結果が出たと思うでしょうか。
さあ。
十分高い真空と、限りなく零に近づけた摩擦のもと、実験しないと再現性はないと、当人は言っていたのです。
追試は、その条件を満たしていたのではないの。
空気で回したなんてのも、あったのですよ。
真空じゃないでしょ!
仮に、コマの回りを真空にしても軸の摩擦が零に近いとは、到底いいがたいでしょ。
空気も摩擦も、限りなく零に近づけないと再現性がないといってるのに、なに考えてるのかしら。
ほかも似たり寄ったりの、到底、報告をまともに読んでいると言い難いものが追試としてまかり通ったのです。
報告された結果が正しければ、重さを変えさえすれば同じ答えが出るはずだと、いうの。
その通りです。
再現の絶対条件と報告した当人たちは言っているのに、肝心のところが完全に無視された追試が当然視されたのですよ。
限りなく零に近い真空と摩擦、これなしに再現はありえないと、言い切っているのですから。
技術の世界で、再現条件の無視をやったら相手にされませんよ。
何が再現の絶対条件か突き止めることこそ、技術では必要ですもの。
当人たちは、空気も摩擦も、限りなく零に近づける工夫をさらに重ねて同じ結果を出していったけど、科学界は黙殺してきたのです。
そんな、馬鹿な!
それが、学者の実態ですよ。
ところで、あなたはこのコマの実験結果を信じているの。
追試の名に値する追試で否定されない限り、ありえないと切り捨てないほうが良いと思っているのです。
報告は疑わしいが、追試の方が問題外では、否定を断言しようがない。
おっしゃるとおりです。
それに、追試には重量と質量の混同さえみえるように、感じられるのです。
重量とは、ある重力下での質量のことですよ。
無重力下の無重量は、無質量ではないでしょ。
日常では、どっちも重さと言ってしまいますね。
報告は、重量の測定結果が回転方向で違ったと記述しているのであって、コマ自体の質量が変化したとは一言も主張していないのですよ。
ところが、追試は地上でのコマの質量は不変だから、重量も不変であるとの前提に立っている。
厳密には地上でも、重量は極地と赤道では遠心力によって差が出るはずでしょ。
そうね。
でも、今回の実験は同じ場所の同じ装置の中でしょ。
それが変化するという報告である以上、納得できる追試であってほしかったですよ。
実験した人の、本とか読んだわけ。
ええ、追試とされる実験についての情報も見たのです。
元の実験が信ずるに足るかどうかはともかく、追試の実態のひどさに唖然としたのです。
最初に否定ありきで、あとから取ってつけたような実験だと。
頭から、絶対的と報告された条件を無視してるものです。
科学者の意見であっても、常識に照らしておかしい場合はおかしいと、指摘できる情報がちゃんと報じられて欲しいですね。
常識を疑って、新発見をしてこそ科学の醍醐味。
その常識を覆す報告を、常識で疑って良いのかしら。
報告者のいう絶対的条件が無視された追試がまかり通るのは、非常識ではないかということです。
元の報告が、正しいかどうかを確かめるのが追試のはずでしょ。
確かにそうですね。
ただ、元の実験の条件がどうだったのか、それを明確にしてもらって再現して欲しかったな。
その辺の公開は、どうだったんでしょうね。
追試結果ばかりが報道され、どういう条件下で起きる現象かは元の実験の報道のときくらいしか触れなかった気がします。
追記。
右回転のコマと左回転のコマとでは質量の測定値に差が出るという発見を行った元東北大学の早坂秀雄博士の報告を、重力の方が変化したとみる人たちは、何人かいました。
反重力研究の最先端
http://quasimoto.exblog.jp/10965881/
「重力は対称性の破れを伴う」という可能性があるということである。
早坂博士はアインシュタインの一般相対性理論の枠組みは正しいが、重力場は対称性を破ると仮定すると、左右回転で重力の作用が異なると証明した。
さらに、自然界の左右非対称性からみてコマの質量の測定値が右回りと左回りで差が出る可能性があると考察した人もいました。
回転体と反重力
http://oyoyo7.blog100.fc2.com/blog-entry-1400.html
そもそも自然界にあるもの。
右か左か、どちらかに大きく偏っている。
ちなみに、通常のアミノ酸なら左、糖なら右、DNAなら右。
巻貝は、9割が右巻きだそう。
右手と左手のように、仲良くペアで存在するものは、むしろ珍しい。
どちらも、早坂博士の報告を反重力と結び付けて考えてるのは、興味深いです。
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コメント
早坂先生の研究チームの者です。
ジャイロの実験では、軽くなる現象を再現させるために必要なノウハウがあります。このことはジャイロ実験の論文には、記載してませんが、同じ条件で追試をやった人は再現に成功しています。
「航空機用のジャイロ」を使えばいいのです。レーザージャイロではなく、コマのジャイロです。多摩川精機では、もう作ってないかもしれません。
なぜ、それで軽くなるのか、ある仮説を立てました。そうすると、お互いに関連がなさそうないくつかの実験報告のつじつまが合うことがわかりました。特許を出願した背景には、そのような考察が最初にありました。
重力の秘密に迫る研究は、新たな段階に入り今後の成果にご期待ください。
科学は、事実に直面する態度が問われますから、徹底的に実験で証明したいと思います。
投稿: T.S. | 2013年8月30日 (金) 16時23分
わぉ!
早坂研究チームの人から、コメント戴けるとは夢にも思ってませんでした!
>同じ条件で追試をやった人は再現に成功しています。
これ黙殺してるメディアって(-_-;)
注目してます!
頑張ってください!
投稿: cova | 2013年8月31日 (土) 10時16分
恥ずかしながら、1989年12月19日の朝日新聞『右回りのコマは軽くなる』の記事は知りませんでした。
私[大山宏]は、投手の投げた野球のボールに『重い球と軽い球とがある』という事実との関連が大いにあり!と考えています。理由は兎も角として、野球の世界では『左投手が投げたナチュラルカーブは重い』というのは常識?らしいですよ。
左投手がナチュラルに垂直回転をボールに与えると、左回りの独楽になります。左回りは時間を節約する方向なのです。羽生弓弦選手などフィギュアスケーター達は皆、左回りで4回転スピンを成功させていますね。あれと同種の効果が出て来る模様です。
早坂研究チームの『右回りのコマは軽くなる』の実験は、アインシュタイン思想『質点からの距離比例で時間軸の矢が伸び縮みしている』の事実を実験物理学として証明した事になっているように感じています。猫の覗き見さん達の記事に感謝!
投稿: 大山宏 | 2018年6月25日 (月) 03時33分
ここで言う重い軽いとは、重量の実際の増減が起きてもいないのにあたかも起きているように感じられる、と言う事。
野球などで、球質の重さ軽さがあるとは聞いていましたが、『左投手が投げたナチュラルカーブは重い』と言うのは面白いですね。
言い換えれば『右投手が投げたナチュラルカーブは軽い』となって、まさにこの報告の回転方向に対応しています。
ただ、真空と言う条件だけが異なるが、独楽は軽い上に回転のトルクが小さいので真空が必要になるのでしょう。
球技の球であれば、十分に質量もトルクもあるから大気中でも現象が現れるのでしょう。
興味深い指摘ありがとうございます。
投稿: cova | 2018年6月29日 (金) 19時04分
ついでにもう一言コメントさせて下さい。
左回転すると、時間節約になるみたいです。
時間の節約になるのです。羽生結弦選手など、4回転半もするような選手は、飛んでいる間、ちょっと時間の進み具合が(世間一般と比べて)遅くなっている模様です。喧嘩独楽の競技がありますが、左利きの人が回す独楽の方が、右利きの人が回す独楽よりも強いはず!これは友達同士で実際にやってみれば確かめられることでしょ。ダメ元でやってみればいい!とは思いませんか?
こんな事を私はブログ上でくそ真面目に書いています!
確かにあなたの仰るように、頭から否定してかかっていたのでは、科学の進歩なんてありえません。不思議な現象に遭遇したら、チャンスと捉えるのが科学者の姿勢でしょう。そこかた大発見や大発明が生まれて来るのですよね。
投稿: 大山宏 | 2018年8月 3日 (金) 01時27分
頭から否定してかかるのではなく、否定するにしてもまず、報告通りにやってみることが大事だと思います。
それで否定してこそ、説得力があります。
そこを避けまくった実験で再現できないことは、否定でも何でもありません。
報告した当人がその条件下ではこの状態は現れなかったと言ってるわけだから、あなたのおっしゃる通りでございますと言ってるのに過ぎないのです。
それでいながら否定できましたって、あまりにも痛々しいです。
悲しくって溜息しかでないです。
投稿: cova | 2018年8月 8日 (水) 09時55分
私の直面した不可解な現象を解明しようと色々当たっているうちにここに辿り着きました。
以下にその現象を記しますので、私が「これかも!」と思ったのは、ご理解いただけるかと思います。
経緯
こどもが保育園で木製の手回しコマをもらってきた。
嫁の制止で、保育園での現役使用中は改造を断念。
園での使用コマがヒモ回しに代わり現役引退となり、改造に着手。
削り出し軸部に金属を埋め込み、軸形状に再研磨。
外周部にネジを打ち、外周重量をアップ。
回転でブレを生じる手回し木軸をバランス取り研磨。
怪現象
ここまでやり、右回しではかなりきれいに回り続けるようになったのですが、試しに左回しにしてみたところ、回転軸がズレるんです、何度試しても同じように。具体的には軸のブレが大きくなります。
精度の低い環境下なので、要因はいくらも考えられるのですが、ここで紹介された現象もありうるかと思いました。
投稿: 改造魔七号 | 2021年2月 5日 (金) 23時21分
右回りと左回りで、ちゃんと同じように回せていますか。
手回しの場合、左右で厳密に条件を揃えるのは結構難しいと思います。
何か道具を使うにしても、左右の条件が揃っているかチェックしていますか。
それと木製ということですが、軸はきちんとした形に整っていますか。
あれこれと突っ込まれても良いように、確かめてみてください。
科学者と言うのは、自分は思い込みの激しいことやっておきながら、他人の粗探しは大好きな人達ですからね。
投稿: cova | 2021年2月12日 (金) 19時11分
コメントありがとうございます。
手回しなので、力の入り方の違いは、最初に疑いました。そして、左手回し、右手逆、両手すり込みなどを試行してみましたが、ブレ方は一定なので、回転方向の違いと考えました。
軸の平滑度も影響が大きいので、先端に金属を埋め込んで削り出し、仕上げに砥石の上で回して接地面の平滑化を図りました。
この状態で、上から見た時の中心がズレます。可能性としては、偏心回転体へのコリオリの力の作用の方が高いだろうとは推測しています。
投稿: | 2021年2月21日 (日) 14時33分
いいですね。
なるべく条件が揃うように工夫して、どんな突っ込みが来ても動じないで済むように、実験を続いてくださいね。
投稿: cova | 2021年4月 4日 (日) 22時31分