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アメノウズメの踊りを考える。

アマノウズメとも呼ばれるアメノウズメは、日本神話に登場する女神の一人です。
『古事記』では天宇受賣命、『日本書紀』では天鈿女命と表記するのです。

 日本最古の踊り子と指摘されることの多い、「岩戸隠れ」のくだりなどに登場する芸能の女神よね。

天岩戸(あまのいわと)は、天戸(あまと)、天岩屋(あまのいわや)、天岩屋戸(あまのいわやと)とも言い、「岩」は「石」と書く場合もあるのです。

日本神話に登場する天岩戸とは、岩で出来た洞窟です。

 天岩戸については、横穴式墳墓であるという説もあるのよね。

日本書紀には、アマテラス死亡説もあるからですね。

天岩戸隠れは、こんな話です。

スサノオの乱暴が原因で、アマテラスは岩戸に隠れて世界が暗闇になる。

神々は大いに困り、天の安河に集まって会議をする。

オモイカネの発案により、岩戸の前で様々な儀式を行う。

アメノウズメがうつぶせにした桶の上に乗り、踊りだす。
その踊りは、背をそり胸乳(むなち、あるいは、むなぢ)をあらわにし、裳の紐を股に押したれて、低く腰を落して足を踏みとどろかし、力強くエロティックだ。

神々は、大笑いする。

アマテラスは、いぶかしがり覗き見をしようと岩戸を少し開ける。

ウズメは「あなたより尊い神が生まれた」と、鏡をさしだす。

アマテラスはアメノタヂカラオにひっぱり出され、再び世界に光が戻る。

私が気にするのは、アメノウズメの踊りです。

今知られている踊りで、一番近いのは何と思うでしょうか。

 踵を股の内側に、つま先を外側にひねって地を踵で強く踏む申楽(さるがく)のステップという解釈もあるけどね。

猿楽(さるがく)とか、散楽(さんがく)とも言いますよね。

猿楽という言葉は、散楽の転訛したものと言うのです。

散楽の具体的な内容は、史料が少ない為にはっきりしていないようですね。

正倉院御物の「弾弓散楽図」などから推測される限りでは、軽業や手品、物真似、曲芸、歌舞音曲など様々な芸能が含まれていたものとされるのです。

ただ、どう考えても奈良時代に中国から伝来した以前には遡れないようにみえますね。

 衣装が前合わせで、腰の紐とか帯を前に垂らす…。

 肌の露出も、相当大胆よねえ。

 衣装からいえば、ベリーダンス(Belly dance、あるいはbellydance)が近いね。

日本の神話には、ギリシャとの類似を指摘する声が多いですよ。

アマテラスの岩戸隠れは、日本神話とギリシャ神話の類似例として挙げられるものの一つです。

 ベリーダンスは、中東やその他のアラブ文化圏で発展したダンス・スタイルよね。

アラブ文化圏では「東方の踊り」を意味するラクス・シャルキー(Raqs Sharqi رقص شرقي)、とか、「民族舞踏」を意味するラクス・バラディー(Raqs Baladi رقص بلدي )として知られるのです。
トルコ語では、「東方舞踏」を意味するオルヤンタル・ダンス(Oryantal dansı)として知られているのです。
ちなみに、アラブ圏の「ラクス・シャルキー」の起源はエジプトであるとされるのです。

 地域の近さから言って、ありえるでしょ。

ただ気になるのは、足の使い方ですねえ。

ベリーダンスで使用されるほとんどの基本的なステップやテクニックは、体の部分ごとに分かれた円運動ですよ。
腰や肩を、床と平行に別々に動かするのです。

 低く腰を落して足を踏みとどろかしたと伝わるところはちょっと、気になるけどね。

ええ。
今知られるベリーダンスには足を激しく踏む振り付けは、見られないですね。

 でも、体はしならせなかったかなあ。

 背をそらせ、低く腰を落して足を踏みとどろかし、でしょ。

肩や腰なら、くねらせた可能性はあるかも。

もし似ているなら、時代が下るとともに、振り付けも衣装も優雅に洗練されたのでしょうか。

 屋内で踊るようになって、振り付けも激しい動きから静かな動きに変化したとか。

ベリーダンスの振り付けは、女性の肉体の「丸さ」「ふくよかさ」を前面に押し出したスタイルを採ります。

 痩身であることを良しとするダイエット嗜好とは、対照的。

実は、ベリーダンスというのは、西洋が言い出した名前です。

余談ですけど。
ベリーダンスは、女性だけではなく、男性も踊っていたそうですね。

オスマントルコの細密画には、キョチェク(Köçek)と呼ばれる若い男や少年のダンサーたちが公演していた様子が描かれているそうです。
 
 ヨーロッパでは、ほかにも「オリエンタル・ダンス」「ダンス・オリエンタル」「エキゾチック・オリエンタルダンス」「オリエンタル・ベリーダンス」などの呼び名で知られてるの。

ベリーダンスは、エジプトではイスラム時代以前から口承に基づき伝授され知られてきたと見られているのです。

 古代エジプトって言えば、日本の神話と、似てますよね。

太陽神を中心に動物神を含む八百万(やおよろず)の神、三神構造、などですね。

 そうね。

そう思えば、日本の神話にベリーダンスをなんとなく連想できる踊りがあってもおかしくないですねえ。

 でしょ。

 アメノウズメが、ベリーダンス踊っていたって、いいじゃないのかしら。

ベリーダンスの起源については、諸説あるのですね。

証拠が最も多く挙げられているのは、地中海世界、中東、アフリカと関係をうかがわせるものだそうです。

 食文化でも、地中海世界と日本、似てるもの多いですよねえ。

ベリーダンサーが鏡の前で行う柔軟体操の姿勢に似ている半裸のダンサー達が、紀元前5世紀ほど昔のものといわれるエジプトの墓の壁画には描かれているそうです。

 古代エジプトの壁画や彫刻って、女性が肌にまつわりつくような薄衣をまとう描写が多いでしょ。

 体に自信ないと、とてもじゃないけど恥ずかしくって着られない位…。

 着てるのに、全裸に近いくらい体の線があらわだもの。

 みんな、体の線がきれい…。

ベリーダンスの描写は、12世紀から13世紀にかけてのペルシアの細密画の中にも見られるのです。

 ペルシャからも大勢、古代日本に来ているでしょ。

なぜか、来てるのです。

アジアの西の端から、わざわざ、東の端まで。

 でも、日本の神話にベリーダンスを思わせる踊りが載っているって不思議ね。

こういうところも、中東周辺に日本に親近感を持つ人々が多い理由でしょうか。

追記

大筋では同意するとしたうえで、足を激しく踏む振り付けは見られないとの発言に、こういう指摘を頂きました。

シュシュという動きは、意識して踏みつけませんが、シミーの爪先立ちなので結果的に大地を激しく踏みしめている感じになります。

追記 2

現代のシュシュは腰は低く落とさないですけど、という指摘をいただきました。

意識して踏みしめない、つまり、腰は低く落とさないということですね。

また、腰を低く落とし、足を踏みとどろかせるさまは日舞に見られるとも、ご意見いただきました。

国風化の過程で、エロチックさは抑えられたが、細かい所作は残っているということかも知れません。

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コメント

こんにちは。コメントを頂いていたのに気づきまして、お返事が大変遅くなってしまい申し訳ありません。
記事を読んでいただけて嬉しかったです。ありがとうございます♪
私も、こちらの記事を興味深く拝見させていただきました。
古代中東は古代日本と深い関わりがあったかと思っています。まさに、アメノウズメはベリーダンスなのでは?と私自身も思います。
ベリーダンスは妖艶とか、ハーレムで踊る、、などどいう印象もあるかもしれませんが、本来そういうものではなく、女性(女)の踊りではなく、母性の踊りだといわれています。
古代、母神を崇めたように、祭りや祈りで踊るものは本来神聖であったものと思います。ですので、アメノウズメの踊りの様子も納得がいきます☆
またお邪魔させていただきます。今後ともどうぞよろしくお願いします♪

投稿: 天音 | 2010年3月20日 (土) 14時18分

中東と日本、もっと繋がりに注意が払われても良いはずですね。

投稿: cova | 2010年3月20日 (土) 15時24分

こんにちは。お久しぶりです(^^)
以前ベリーダンスとアメノウズメについてブログにコメント頂きありがとうございました。
今日書いた新しい記事にこちらのサイトを紹介させて頂きましたので念のためお知らせさせて頂きます。
(不可ならお申し付けください)

それと、再度この記事を拝見しまして、「ベリーダンスに足を激しく踏む踊りがない」とありましたが、近いものがありますよ~(^^)
シュシュという動きです。意識して踏みつけませんが、シミーの爪先立ちなので結果的に大地を激しく踏みしめている感じになります。けっこう体力使う動きです(^_^;)
現代のベリーダンスは古代のものと若干違うかもしれませんね。いろいろなダンサーが技を磨いて新しい技を入れたりして変わってきている部分もあるかと思います(^^)
またお邪魔いたします☆

投稿: Iris 天音 | 2012年2月29日 (水) 13時18分

ベリーダンスに足を激しく踏む、シュシュという動きがある、それはどうもお教えいただきありがとうございます。

関連サイトというだけで、リンクされてしまうアプリもあり、私のところでも使っているので、あまり気にしていません。

一度発表してしまった以上、さまざまに引用されたりリンクされたりすることは避けられないですから。

投稿: cova | 2012年2月29日 (水) 14時27分

大変興味深く読ませていただきました。
日本起源だと、国内で何で現代に伝わっていないのかが気になりますね。
年代的にも古事記がちょうど1300年前の712年でギリシア神話がさらに遡る事1400年くらいかな?

p.s.
現代のシュシュは腰は低く落とさないですけどね^^;
腰を低く落とし、足を踏みとどろかせるさまは日舞に見られるかなと。

投稿: NIKE | 2012年6月 6日 (水) 11時40分

日本は国風化してしまうことが多いので、一見すると分かりにくくなってるということでしょうね。

シュシュは、足を激しく踏むが、腰は低く落とさないということですね。

ご指摘ありがとうございます。

腰を低く落とし、足を踏みとどろかせるさまは日舞に、確かにありますね。

投稿: cova | 2012年6月 6日 (水) 22時36分

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