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ダムは経済的か。 ダムを考える その2

ダムについて、考えてみましょう。

ダムは、一般に治水や、発電、灌漑用水、水道水等利水のために水を貯める機能を有しています。

 ダムは、土砂やゴミで一杯になってしまわないのでしょうか?

 川の途中をせき止めたダムには、上流から土砂や流木などがどんどん溜まっていってしまうような気がします。

河川を流れてくる土砂も、溜まることになります。

河川にダムがない場合、洪水時には土砂や有機物は濁水とともに一気に流れ、粒径の小さい土砂や軽い落葉等の有機物の大半は海まで流出し、海底に堆積します。

ダムができると、一般的には、粒径の大きな土砂等はほとんどがダム湖内に堆積します。

洪水時に水中に浮遊するような粒径の細かい土砂や有機物は、ダムがない場合と同様にダム下流に流れますけどね。

流木も、浮いているけれどダムからの取水や放水の妨げになるから、取り除かないといけません。

 そうすると、貯めることのできる水の量が減っていってしまうのではないかと心配です。

ええ、上流からの土砂が溜まって、貯水量が減少します。

溜まっても、発電ダムとしては落差利用なのでそんなに困らないのです。

取水口より、水面が上にありさえすればいいのですから。

 それでも、寿命はくるでしょ。

もちろんですよ。

取水できないことには、発電できませんから。

水害防止としてや、貯水量としては、砂など溜まっていくのは当然致命的ですけどね。

貯水や発電といったダム本来の機能が維持できなくなるだけでなく、下流河川の浸食や海岸侵食など、いろいろな問題が発生します。

これが、ダムの寿命の原因の一つです。

そこで、ダムに貯まった土砂を下流に流すことで、これらの問題を総合的に解決する必要があります。

 何か、土砂やゴミがたまらないような仕組みがあるのでしょうか。

土砂やゴミがたまらないような仕組みは、いろいろあります。

たとえば、下から水を抜いて砂を出す方式は、かなりの数のダムに設置されてはいるのです。

 それでも少しずつ、溜まっていくでしょう

ええ、水抜き穴の付近に溜まった土砂しか流せないので、ほとんど利用されていません。

それから、排砂ゲートという方法があります。

宇奈月ダムは黒部峡谷では最も新しいダムで洪水防止を主目的とした多目的ダムで、国土交通省が建設し、2001年に完成しました。

宇奈月ダムの特徴は、上流の出し平ダムと同様に排砂ゲートを備えていることです。

 宇奈月ダムと出し平ダムの共通点には、重力式コンクリートダムというのもあるでしょ。

ええ、高さは宇奈月ダムは97m出し平ダムは76.7m、総貯水量は宇奈月ダムは24,700,000立方m出し平ダムは9,010,000立方mです。

出し平ダムは発電が目的で、1985年に完成し新柳河原発電所で41,200kW、音沢発電所で124,000kWです。

一方、宇奈月ダムの洪水調整能力は700立方メートル/秒、水道水供給量は58,000立方メートル/日、発電能力は20,000kw/hです。

全国有数の急流河川である黒部川は、特に周辺の山地の浸食作用が著しく、大量の土砂が河川に流れ込むため、短期間でダムに土砂が貯まります。

この貯まった土砂を定期的に排出してダムの能力を回復させるのが排砂ゲートです。

しかし、出し平ダムの排砂では下流の漁業者の間で問題を起こしています。

 言ってみれば、小規模な大水を人工的に起こしているようなことでしょ。

自然の大水であれば、もっと間隔があくけど、いくら小規模でも間隔が狭いと海流などで処理しきれないでしょうね。

黒部川の宇奈月ダムと出し平ダムの連携排砂も最近できた方式だけれど、ここはダム貯水の回復が非常に早いので可能になった方式で、十分水が貯まるまで数年掛かる普通のダムには適用できません。

最近増えているのは、ダム湖の上流に貯砂ダムを造るというものです。

つまり、本来のダム湖の上流に小さなダムを造って、洪水時には水はダムを乗り越えて下流に流れるが、土砂はここで止めるというものです。

貯めた土砂は定期的に掘削して排除します。

ある程度の効果はあるが、先にも言ったように、細かい土砂は濁水となってダムを乗り越えるので、完全なものではありません。

また、排砂バイパスといって、ダム湖の上流からダムの下流までトンネルを掘っておいて、洪水時にはダムから放流する水量を、洪水時に生じる高濃度土砂とともにこのトンネルを通して流してしまおうというものです。

これもそれなりに効果はあるが、トンネルを造るため費用が場合によっては数千億円と非常に高額というのがつらい。

ダム貯水池の堆砂対策は昔から非常に難しい問題で、現在様々な方式が開発中です。

ただ、ダムというのは特性が千差万別で、ここでうまく行ったからと言ってよそでもうまくいくとは限らないという困難を抱えています。

ただ現在、新たなダム設置が難しくなっており、一方で地球温暖化に伴う気象の変動が大きくなって渇水も増えると予想されることから、既設のダムの機能回復は非常に重要な国家的課題になっています。

ダムに関わる様々な組織で、熱心に研究が進められています。

ダムには、もう一つの寿命があり、実はこちらがもっと深刻です。

コンクリートの寿命なのです。

一般にコンクリートは、70から100年で寿命がくると言われています。

その原因として次のことが上げられます。

劣化は、凍結と融解の繰り返しで細かい隙間を大きく広げていく。

中性化は、セメントが二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムとなり、コンクリートが酸性側に傾き、中の鉄筋が錆びはじめていく。

アルカリ性骨材反応は、骨材のシリカ、シリケート、炭酸塩により、アルカリシリカ反応などが起こりゲルが生じる、これが水を吸って膨張し、ヒビ割れが起きコンクリートの強度が弱まる。

これは、コンクリートであれば、どんな建造物でも避けられません。

ダムにはさらに、次のような要素が加わります。

疲労・摩耗は、土石流がダム壁に何度も繰り返し力を加える、また土石のヤスリのような働きでコンクリート表面を削っていく。

塩害は、塩素イオンが鉄筋を錆びさせることで、錆びはもとの体積の2~4倍となり、ヒビ割れなどを起こさせる。

以上のことが相互的に進んで寿命がくるのです。

大きなダムが破壊すれば、土石流災害の供給源となってしまいます。

そのうえ、コンクリート自体が山を切り崩して採掘しています。

小さな山など、短期間で消えてしまったものもあるのですよ。

 メンテナンスのために消えていく山が、これ以上増えていいかという課題にも、やがて直面することでしょう。

さらに、維持費問題があります。

例えば、マスコミが報道しない八ッ場ダムの維持費は、ダム本体だけで年間10億円以上とも言われています。

 ダム設置に伴う、周辺地盤への影響も、無視できなくなっていますね。

岩盤の弱い地域まで、設置が広まりましたからね。

この地盤への対策費は、新たな課題となってのしかかるでしょうね。

ということで、いずれにしてもダムには問題点が多いのです。

 本当に必要なダムはどれか、絞り込まないと、ダムの存続そのものが危うくなる。

もっと、国民が知る必要があることでしょうね。

近自然工法で、最低限の手を加える手法をきめ細かく講じることこそ、治水でも利水でも長い目で見て安く上がるはずです。

漁業との共存も、容易でしょうし。

追記

塩害は、コンクリートに海砂など塩素イオンを含むものが入ってしまうと通常の建造物でも起こり得るが、川砂など塩素イオンがでないものを用いれば環境からの影響だけ考慮すればいいとみて、コンクリート本来の寿命を決める要素から省きました。

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