フィンランド語と日本語
フィンランド人は、日本に文化的な類似を見て親近感を覚えていると言いますね。
フィンランドは妖精で日本は妖怪、干しキノコを含むキノコ料理が好き、森を地域の共有財産とする文化も似ている。
森を地域の共有財産というのは、日本でいう入り会いですね。
森だけではなく、海にも入り会いはありますよね。
キノコも、トリュフのようではなく、日本のものに似てますね。
さらには、熊を神の使いと見て、熊送りの儀式を100年位前までしていたそうですよ。
熊送りの儀式といえば、日本先住民のアイヌにもあるでしょ。
そういえば、フィンランド語で酔っ払いは Juoppolalliで、非常に日本語に類似してる という記事を見ますね。
フィンランド人とハンガリー人は、系統が同じだと言われますよ。
ついでにいうと、ハンガリー人も文法の似た言葉を話す日本に親近感を持っていますよね。
系統が同じというのは、言葉の上では、でしょ。
ええ、そうですね。
これは、フィンランド語がエストニア語やハンガリー語などとともに属しているウラル諸語と言われる親戚の言語グループの共通の祖先の言語が、ウラル山脈のあたりで話されていた言語で、それが、トルコ語やタタール語などチュルク諸語やモンゴル諸語などの祖先の言語と親戚であるとされるところから来ています。
アジア系の言語だの、母音・促音、膠着語の点で日本語に似てるだの言われて、変に親近感を持つ人もいるようです。
買うはドイツ語でkaufenというように、日本語とドイツ語は、音はかぶってます
同じようなことが、フィンランド語と日本語にもあるわけですよ。
juoppalalliは日本語の酔っぱらいと近似していて、何となく有名です。
これが偶然なのか、何か言語的なつながりがあるのかどうか、気になるでしょ。
フィンランドのこの言葉は、飲むという動詞、juodaの派生語で、酔うを意味する動詞、juopuaから来ているのです。
類似の言葉が、バルトフィン語(itämeren suomalaiset kielet)である、本カレリア語、リューディ語、ヴォート語、エストニア語などに見られます。
もっと遠くの親戚言語であるハンガリー語にも、ivóという形で見られます。
とするともっと遡ってウラル原語にも見られたのでないかと思いたくなります。
アルタイ語では、どうだろうという疑問さえ湧いてきますね。
現在の定説では、ウラル系の言語とアルタイ系の言語は相互の連携関係が言語としては否定されています。
個別の言葉に連携があったのでしょうか。
そこまではわかりません。
フィンランド系の言葉には、酔っ払うあるいは酔っ払いという表現がおよそ1000個ぐらいあるそうです。
juopua系等のjuoppolalliもその一つですが、この系統の言葉は5000年以上の古い言葉と言われています。
もう一つのhumala系の言葉で酔っぱらいは、例えばhumalainenというのがあるが、ホップHumulus lupulusから来ている植物起源のことばです。
こちらはゲルマン系の起源の言葉と言われています。
ビールに入れるホップには、カーナビスのような麻薬的な効果も少しあるのです。
膠着語といってもウラル語族の系統にあるフィンランド語とアルタイ語族の系統に相関関係をもつ日本語族とでは、地理的な距離が遠いと言うこともあってかなりの隔たりを感じます。
しかし遺伝子的には2万年前に、モンゴルあたりから日本に流れた民族もいるようです。
フィンランド人の中にもこの民族の遺伝子が含まれる人がいるそうなので、赤の他人とはいえないのかもしれませんね。
フィンランド人を遺伝的にみると、面白いことになるそうです。
遺伝子研究が世界的に盛んだが、フィンランドではとくに盛んで、このほど「フィンランド遺伝子地図」の新版が出たそうです。
40000人のフィンランド人の遺伝子に関するデータが、集められているといいます。
地図をみると、遺伝子の比較では、フィンランド人は言語的に同系とされるハンガリー人よりも、オランダ人の方により近いということがはっきりわかるそうです。
フィンランド人が、遺伝子的にゲルマン系の言語を話す人々と意外に近いということは、実はかなり以前から言われていたので、とくに驚く結果ではないといいます。
ところが一方で、こんな結果も出ているそうです。
フィンランド語が東の方から西の方にやってきたという考え方も、それほど間違いではないかもしれないと言えるものなのですよ。
今のフィンランド人のもつ遺伝子の一部が、東の方から現在のフィンランドの地にやってきた人々によってもたらされた可能性は大いにあるというのです。
東方からの移住者たちが話していた言語は、今のフィンランド語やエストニア語の祖先の言語だったろうと考えられています。
フィンランド人は、モスクワの東のムロム地域のロシア人と遺伝子的に近い関係にあるそうです。
ムロム地域には、かつてフィン・ウゴル語系の部族が住んでいたことが地名から明らかだそうです。
フィン・ウゴル語派は、ウラル語族に属する言語群です。
ハンガリー語、フィンランド語、エストニア語などを含みます。
このほかにロシア連邦などに分布する多数の少数民族の言語を含むが、すでに絶滅した言語、現在危機に瀕する言語も多いそうです。
シベリア北部のサモイェード語派とともにウラル語族を構成するが、人種的にはサモイェード語派と比較すると、モンゴロイドよりもコーカソイドに近いのです。
フィン・ウゴル系の言語を話す人々が、「ヨーロッパ・ロシア」と呼ばれるウラル山脈の西側には、かつてひろく広がって住んでいたということも定説になっています。
じゃあ、言語学の結果とほぼ重なるじゃないですか。
ウラル山脈の西側のフィン・ウゴル系の人々は、遅くとも10世紀くらいにはロシア語化したようですけどね。
ここで注目したいのは、フィン・ウゴル語派と近いとされるサモイェード語派です。
サモイェード語派またはサモエード語派は、ロシア連邦北部に住むモンゴロイドに属するネネツ人を含むサモエード人の話す言語群です。
サモイェード語派は、ウラル山脈から西方で話される言語的にフィンランド語やハンガリー語を含むフィン・ウゴル語派とともにウラル語族に属すのでしたね。
原住地はウラル山脈以東、アルタイ山脈以西にあるカニン半島からタイミル半島からオビ川・エニセイ川流域のミヌシンスク盆地からサヤン山脈におよぶ広大な地域と伝わります。
最も多いネネツ語話者は3万人ほどいるが、その他の言語の話者は数十人から千人程度です。
ネネツ語話者は、ほとんどがテュルク諸語、モンゴル諸語またはツングース諸語と同化したグループがいたため、すでに死語となってしまった言語も多いですね。
サモイェード語派はフィン・ウゴル語派とは早期に分かれたと考えられているが、母音調和など共通の性質を多く持ちます。
基本的には膠着語で、名詞の格や、動詞の法・時制、主語および目的語の数と人称による変化は接尾辞で示されます。
数には単数・双数・複数の区別があり、また名詞の後につける所有接尾辞で所有を表します。
これらの変化に伴うフィンランド語などと似ている子音階梯交替も、一部の言語にあるそうです。
階梯交替というのはpappi(牧師)から papin(牧師の)にかわるように閉音節になると重子音が短子音になる、 つまり pp と p とが交替するという現象のことです。
ネネツ人は大きく経済基盤を異にする2グループにわかれます。
極北のツンドラネネツと森林ネネツです。
また、フィン・ウゴル語派で、人種はコーカソイドに近いコミ人グループに属するイズマ(Izhma)族との混血によるコミ人と同化したネネツ人(Yaran people)が第3グループとして現れてきています。
紀元前200年頃に、故地のオビ川・エニセイ川流域のミヌシンスク盆地からサヤン山脈付近から移動して、アルタイ語族に合流し、テュルク系またはモンゴル系と同化した一派もいました。
ヨーロッパに残ったグループは、1200年頃にロシアの支配下に入ったが、より東方に居住していたグループは14世紀まで、ロシアとの交流を持たなかったのです。
17世紀初頭に全てのネネツ人は、ロシアの支配下に入ることになりました。
ネネツ語はエネツ語、ガナサン語、セリクプ語とともにサモイェード諸語に含まれます。
サモイェード語派はウラル語の小分岐であり、大分岐はフィン・ウゴル諸語で、言語学的にも、ウラル語とフィン・ウゴル語を比較する上で非常に重要なことです。
サモイェード語派はウラル語の小分岐というと、気になるのが日本人のルーツの一つとして近年注目を集めているバイカル湖畔のブリヤート人です。
ロシアの秋田美人ですね。
北米先住民であるネイティブ・アメリカンや縄文人の遺伝子に、近い特徴を持つといわれるでしたね。
ブリヤート人は、ロシアやモンゴル、中国に住む民族です。
ロシア連邦内の人口は436,000人で、とりわけブリヤート共和国に多く共和国の全人口の約4分の1を占めます。
居住地域は、ロシア連邦内ではブリヤート共和国を中心にウスチオルダ・ブリヤート自治管区、アガ・ブリヤート自治管区などです。
そのほかモンゴル国の北部、中華人民共和国内モンゴル自治区のハイラル近辺のシネヘンにも居住しています。
古来からメルキト族と同様に元来はウラル語派に属する南サモイェード諸族であり、シベリアから南下してテュルク化し、最終的にはモンゴル化したといいます。
そういう意味では、現在もテュルク諸族に属する自らをサハと名乗るヤクート人に近いといえる種族といえます。
ブリヤート人も、バイカル湖の東に住む者と、西に住む者とでは、かなりの違いがあります。
東に住む者は、固有の文化を維持し、ロシア人との混血が進んでいないのに対し、西に住む者は、生活がロシア化され、ロシア人との混血が進んでいます。
サモイェード語派はウラル語の小分岐であり、大分岐はフィン・ウゴル諸語ということは、こういえるのではないでしょうか。
フィンランド人の属するフィン・ウゴル語派とサモイェード語派を含むウラル語がまず分かれ、サモイェード語派から南サモイェード語派であるブリヤート人は分かれている。
そして、ブリヤート人が日本人のルーツの一部であるならば、フィンランド人は日本人の遠い親戚にあたる。
フィンランドに住む人々の主体は、スウェーデンなどとよく似た北欧系のヨーロッパ人であることは、フィンランド人のたどった歴史を見れば何の不思議もないわけでしょ。
フィンランド人が日本人の遠縁だから、日本人のフィンランド人がアジア系だという思い込みがなくならないのは不思議でもなんでもない。
そうでしょうねえ。
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コメント
はじめまして。
フィンランドはフン族の国と聞いたことがあります。
空港での響いていたおしゃべりの音声はほかの西洋の国とはずいぶん違っていたと聞きました。(日本ぽかったか、東洋ぽかったか・・・どちらかを聞きました。)
ずいぶん昔のききかじりでごめんなさい。
投稿: にいろ | 2011年1月29日 (土) 11時11分
いえいえ、日本ぽかったか、東洋ぽかったか・・・どちらかという話だけでも、十分興味深いです。
投稿: cova | 2011年1月29日 (土) 16時54分