アンコール・ワットと日本?
アンコール・ワットは、細かいところにこだわっても面白いけれど、そこだけを見ていくと謎だらけになります。
アンコールは町、ワットは寺、つまり寺町という意味です。
アンコール・ワットはヒンズー教の寺院です。
東京ドーム15個分の広さに、さまざまな意味を込めた造形や装飾が、ありますもの。
アンコール・ワットの、基本的な思想は全体の構図の中に、壮大な思想体系は細部の造形や装飾の中に、込められていると言って良いでしょう。
そこで、アンコール・ワットに込められたメッセージを読み解くには、まず全体構造に託された基本的な思想とはいったいどのようなものであったかを、見る必要があるでしょう。
よく指摘されるのは、アンコール・ワットが山を造形したものだということです。
神の山、ですか。
須弥山を意識したのだと、指摘されます。
じゃあ、神奈備山とも神南備山とも書かれる、神霊が鎮座する山。
でも、山というなら、ピラミッド型でも良いのではないでしょうか。
つまり配置に意味がある。
細かいところに、あえて目をつぶって、全体を見てください。
曼荼羅に、似てますね。
曼荼羅は3×3の構図が、基本です。
じゃあ、生命の樹ですか。
その通りです。
古代インドにも、タントラという陰陽道やカッバーラ同様の、古代の唯物弁証法があったのです。
唯物弁証法の思想の三本柱は、次の通りです。
①対立物の統一と闘争
②螺旋的発展(否定の否定)
③量から質、質から量への転換
そして、もう一つの三本柱があります。
①理論
②運動
③実践
両者を3かける3の構図で組みわせると、曼荼羅や生命の樹とそっくりな構図が浮かび上がるのです。
日本にも、似た構図がありますよ。
門松、ですか。
3・4・3の構図ではないかと、いう声も出るかもしれません。
生命の樹の真ん中の柱には、マルクトという10個めの節が付くのです。
けれど、マルクトを除く9個の節だけでも生命の樹なのですよ。
さらに、出雲大社は柱の配置がまさに3×3の構図です。
じゃあ、アンコール・ワットと出雲大社は、カッバーラ・タントラ・陰陽道という共通の思想で作られているのですか。
日本建築に、屋根に鬼瓦という魔除けの顔があるでしょ。
初期アンコール朝の遺跡にも、屋根に魔除けの顔があるのですよ。
それも、ギリシャやローマ、トルコやペルシャ、スペインやポルトガル、まさにローマ帝国領の人々の顔です。
面白いことに、南部イタリアにも屋根に魔よけの顔を付ける風習があるそうです。
じゃあ、鬼瓦の鬼のモデルは、元をたどれば古代ローマ帝国の人。
ありえますね。
アンコール朝時代の港の遺跡からは、ローマ帝国のコインも見つかると言いますよ。
アンコール朝はまた、古代ローマ並みの土木建築技術があると言います。
小さな橋でさえ、古代ローマにも匹敵する技術が見て取れると言います。
海のシルクロードが、あったからでしょ。
東南アジアは、香辛料を求めるローマ人が来ていたところですからね。
じゃあ、日本にあるクメールの遺伝子は、海のシルクロードが原因でしょうか。
少なくとも、一部はそうかもしれないですね。
シルクロードの東の端に日本はあるから、イタリア的な顔の人は日本にいてもおかしくない。
どこか中東でしょと、勘違いされる顔も、海のシルクロードからきたトルコ人やペルシャ人の血が入っていればなっても、そうなってもおかしくない。
でも、建国間もないころ、多くのペルシャ人も来てますよ。
平家にもペルシャとの関連が、見えたでしょ。
じゃあ、なおさらペルシャ風の顔は日本に居て当然なのね。
そうそう、アンコール・ワットと出雲大社ですね。
以前、この歌でシュリーヤントラを連想したって言いましたよね。
八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を
アンコール・ワットは、タントラ思想を持ったヒンズー教の寺院ですよ。
それと、陸のシルクロードで東の出発点は西安でしょ。
海のシルクロードは、出発点はどこでしょう。
アンコール王朝も、中継点ですよね。
日本まで来ていても、おかしくないはずですよ。
新羅にも、ローマの強い影響はありますから。
日本建築に見えるギリシャ・ローマの影響は、海のシルクロードによると見たほうが良いかもしれないですよ。
八角堂は、海のシルクロードがもたらしたといえるでしょう。
アンコール朝の初期には八角の建築があり、ヨーロッパでもよく見かけると言います。
トルコのエフェソス遺跡にあった、クレオパトラの妹じゃないかといわれる人のお墓の形も『オクタゴン』と呼ばれる八角形ですね。
ギリシャの血を引いているから、この八角形なのだろうっていうでしょ。
中国は丸だから、似ているけどまるで違います。
中国で学んだ人も多いから、丸だって建てられたはずでしょ。
だけど、八角や六角に、こだわってますね。
中国から多くを学びながら、中国化しないで国風化しているでしょ。
その国風化の根底に、古代ローマの影響がある。
広く、古代中東という風にとらえたほうが良いかもしれないですけどね。
それと、アンコール朝の国つくりも、すべての道はローマに通ず、ならぬ、すべての道はアンコールに通ず、とでも言いたくなるやり方だそうですね。
アンコール朝は、世襲ではなかったのです。
当時のアジアの王朝としては、かなり珍しいことです。
世界の王朝でも、たいてい世襲でしょ。
ええ、日本の天皇も世襲ですね。
古代ローマ帝国の皇帝や、神聖ローマ帝国の皇帝は世襲ではなく選挙されていたけど、それは一国の支配者としては例外的ですね。
それでいて、ジャヤーヴァルマンを名乗る王は、何度も登場します。
ちなみに、アンコール朝中興の王にして最盛期の王はジャヤーヴァルマン7世と見られています。
この7世というのは後世の研究者が便宜上つけた数字で、当時はもちろんついていません。
アンコールトム遺跡には相撲のレリーフも、見つかります。
それは、まわしと思えるものを身に着けた向かい合う二人の姿から想像できるのです。
さらに、初期アンコールの遺跡からグリフィンが連想できるレリーフも見つかるといいます。
グリフィンとは、鷲あるいは鷹の翼と上半身、ライオンの下半身をもつ伝説上の生物です。
グリフィンの名は、曲がった嘴を意味するギリシア語のグリュプス(Γρυψ)なので、ギリシア神話に登場する思われているが、誤りだといいます。
ヘロドトスの『歴史』など古くから多くの物語に登場しており、伝説の生物としての歴史は古いそうですね。
古代では、神の力のシンボルとも神の守護者ともされました。
崇拝の歴史はメソポタミアや古代エジプトに遡り、ギリシャやローマへと続いたのです。
現在のカザフスタン南東にあたるスキタイのアルタイ山地あたりでは、貴重な財産を守ってくれる存在とされるようですね。
アンコール朝の正体はなんだったのか、これからの展開が面白そうです。
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