なんと、固体の中に超流動がある?!
なんと、固体の中で超流動が起こるというのです。
超流動とは、まったく粘り気のない超流体に起こるとされてきた不思議な現象です。
固体と液体の境目も、あいまいなのですね。
固体と液体の境があいまいといえば、ガラスもそうですよ。
ガラスとは、昇温によりガラス転移現象を示す非晶質固体や、そのような固体となる物質をさします。
このようなガラス状態の固体は、結晶と同程度の大きな剛性を持ち、粘性は極端に高いです。
そして、固体の中の超流動は、まったく粘性はありません。
おそらく、非晶質なのでしょうけど。
非晶質でも、ゴム状態のように柔らかいものはガラスとは呼ばないですね。
もちろん、ゴムとも、違うでしょ。
これは、理化学研究所の成果です。
超固体は存在する
08 April 2011
超固体という新しい物質相の存在を支持する実験結果が得られた
http://www.rikenresearch.riken.jp/jpn/research/6524
©2011河野公俊・Eun-Seong Kim
超固体と超流体は、量子力学的現象の中で最も不思議な部類に入るといってよい。
超流体は粘性なしに流れ、容器の壁に沿って流れるときにも摩擦が生じない。
これは、液体を構成する原子が「凝縮」して高度にコヒーレントな状態になっているからである。
超固体もコヒーレントな状態を特徴とするが、こちらは、固体を構成する原子だけではなく、結晶格子の空格子点が重要な役割を果たすコヒーレントな状態になっていると考えられている。
超固体の生成は、円筒状の固体ヘリウム4をきわめて低い温度まで冷却する実験において慣性モーメントの減少が確認されたことで、初めて証明された。
慣性モーメントが減少したのは、ヘリウムの一部が超固体になって試料棒の残りの部分から分離し、慣性モーメントと回転周期を変化させたと解釈できるからである。
一方、慣性モーメントの減少は温度変化とともにヘリウムの粘性や弾性が変化したからであり、超固体が生成し始めたからではないという反論もある。
このほど、理研基幹研究所(埼玉県和光市)の河野公俊・主任研究員、韓国先端科学技術大学(KAIST)のEun-Seong Kim准教授をリーダーとする研究チームは、固体ヘリウム4の温度を1ケルビンから15ミリケルビンまで下げていったときの剛性率(物体の弾性を示す値の一種)と慣性モーメントを同時に回転下において測定し、慣性モーメントの減少は粘弾性に起因するという考えが適当でないことを示した1。
1.Choi, H., Takahashi, D., Kono, K. & Kim, E. Evidence of supersolidity in rotating solid helium. Science 330, 1512–1515 (2010). article
研究チームの実験装置は、固体ヘリウムが入ったセルの回転の向きを周期的に切り換えることに加えて、全体が一定の向きに連続して回転するようになっている(図1)。
図1:特別に開発された回転するクライオスタット(低温恒温装置)。
15ミリケルビンまで冷やすことができ、超固体が存在する証拠の発見に使われている。
連続回転は、超固体の生成による慣性モーメントの変化に影響を及ぼすが、剛性率には影響を及ぼさないと考えられ、これらの量を独立に観察することができる。
実験の結果、慣性モーメントの変化は連続回転の回転速度に明らかに依存していたが、剛性率は依存していなかった。
また、回転によって散逸するエネルギーは高速回転では増加することがわかった。
これらの測定結果は、慣性モーメントの減少が超固体の生成ではなく粘弾性の変化に起因している場合に予測される結果とは一致しない。
さらに、研究チームは、周期的な交互回転と連続した回転が慣性モーメントと散逸に及ぼす影響が異なっていることも見いだし、この実験系に関する新たな問題を提起した。
今回の実験結果は、低温での固体ヘリウム4の慣性モーメントの変化が超固体の生成に起因しているとする解釈を支持するものである。
「この成果は重要です。超固体は非常に新しく驚くべき現象なのです。固体の中で起こる超流動という概念は、きわめて革新的で、もし証明されれば間違いなくノーベル賞の有力な候補となるでしょう。まずは、低温物理の研究者たちを納得させられるような方法でそれを証明することができるかどうか見極めることが先決です」と、河野主任研究員は語っている。
本ハイライトの原著論文の著者情報などについては、基幹研究所・河野低温物理研究室までお問い合わせください。
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