稲荷の鳥居はなぜ赤いか想像してみた。
稲荷といえば、赤い鳥居に白い狐が一般的ですね。
稲荷は、山城国稲荷山(伊奈利山)の西麓、すなわち現在の京都市伏見区にある伏見稲荷大社に鎮座する神で秦氏の氏神ですよね。
そして、主な祭神は宇迦之御魂神。
宇迦之御魂神は、別名「御饌津神」(みけつのかみ)と言い、一方で、狐の古名を「けつ」と言うので、御饌津神を「三狐神」と解して、狐は稲荷神の使い、あるいは眷属に収まったと伝えられるのでしたね。
でも、こういうことがわかっても、どうしてこの色かは、謎でしょ。
そうですね。
白についていえば、陰陽では西や陰に配される色ですよ。
生と死でいえば、死に配される霊、つまり神などの魂に関する色です。
つまり、白い狐は魂の世界の生き物という事です。
聖なる生き物は、白とされる場合が多いですよね。
狐は、かつて食肉目と呼ばれた哺乳綱ネコ目イヌ科の動物です。
狭義には、キツネ属 Vulpes の総称で、広義には、キツネ族のオオミミギツネ属、ハイイロギツネ属、さらにイヌ族のカニクイキツネ属、フォークランドキツネ属、クルペオギツネ属まで含める場合もあります。
しかし一般的に「fox」は北半球に広く生息しているキツネ属のアカギツネのことを指します。
古来日本で「狐」といえばアカギツネの亜種であるホンドギツネのことを指したが、明治以降キタキツネも含むようになりました。
食性は肉食に近い雑食性だが、普段は、鳥、ウサギ、齧歯類などの小動物や昆虫を食べます。
雑食性となるのは、餌が少ないときで、人間の生活圏で残飯や鶏を食べたりすることがあります。
つまり、食料に困らない状況では、狐は肉食獣として振る舞うわけです。
人里は、人の食料や財産を狙うネズミが多いですよね。
そこで、ネズミさえ取ってくれれば青大将のような蛇でも喜んだのでしょ。
人里は、狐にとってネズミが多いから食べ物に困らないし、雑食とは言っても残飯は狙っても農作物は漁らないから、鶏とか襲われない限り益獣として歓迎されたでしょうね。
日本じゃ、養蚕家はネズミ除けに猫が欲しくてもなかなか手に入らないから、猫石と呼んで石を置いたり、猫絵を飾ったりしたくらいですから。
日本の自然界にいる狐は、警戒心が強いから懐いて家に住んでくれないけど、人里に来てネズミを食べてくれるだけでもありがたかったでしょうね。
それで狐を、神様が遣わしてくださった存在と見たというのは、有り得ますね。
神は魂の世界の存在で、白は魂の色だから、白い狐なのでしょうかね。
時代を下ると産業神化していく稲荷だが、時代を遡っていくと農耕神として祀られていたせいか意外と水関係の場所に祠が見つかります。
それも、しばしば弁才天がすぐ傍らだったりします。
そして、時として火除けの神として祀られるのです。
もしかすると、稲荷には水神の側面があるのかも知れないですね。
そういえば、作物を守ってくれる狐を象徴とした稲荷は農耕神という性格から、産業一般の神へと展開したのでしたね。
でも、火除けの神として祀られることもあった稲荷の鳥居が、火を連想する赤い鳥居というのは、なんだか皮肉。
「日照りに不作なし」と稲作は言われます。
実際、雨がシトシトと降り、日照りの正反対の冷夏こそ、お米は不作になってしまうのというのです。
稲は、元が南方生まれだから、日差しを欲しがるのですよ。
稲は水の管理さえできれば、多少暑い日が続いても平気だし、かえって喜ぶわけです。
水神とされる弁才天が傍らに祀られることがあるのも、水に困りたくないからでしょうね。
それと、陰陽では、火に配当される赤は地にも配当されます。
地に配当される赤を上に持ってくれば、天と水に配当される黒は下に来るでしょ。
つまり、水に困らない呪術として、わざと鳥居を赤くしている可能性がありますよ。
それで、稲荷は水を操る神と見られ、水神としての側面を持つから、水に関連する場所に祀られる場合がある。
さらに、陰陽では水克火とされるから、火除けの神としても祀られる。
そうかもしれません。
それと、狐の対極には、よく、狸が配されます。
狐も狸も、化けるとされますね。
狐は上を向いたまま化けるけど、狸は一旦宙返りして化けますね。
おそらく、狐はよく昼間に見かけるが、狸はもっぱら夜に見かけることと関係あるのかも知れないですよ。
狐はネズミは獲るけど作物は盗らないので益獣として重宝されるが、狸はネズミも獲るけど作物も盗るので害獣扱いという点も、関係ありそうですね。
狐を陽とすれば狸は陰となるので、狸封じの呪術も兼ねて狐が稲荷に配されている点もありそうですね。
さらに、里の獣と書いて狸だけれども、かつて狸とされた生物の大半は実は猫だったという研究もあります。
猫はミャオと鳴く生き物であり、ネズミは獲るが作物は盗らず害獣の狸とは別とわかったので、中国語でミャオと読む苗の字を当てたのでしょうね。
猫の字は、前足を揃え腰を落として座っていることが多い猫の姿も連想できますね。
だが、狸と書かれた生き物の大半が実は猫だったとなると、猫は里の獣の総称とされた生き物だったことになります。
確かに、正面や後ろからシルエットを見たら、狐も狸も猫も、遠目には似てますね。
さらには、テンやイタチも、シルエットは見様によっては猫そっくり。
イタチの仲間であるフェレットが珍しかったころ、変わった猫ですねと、言われることが良くあったそうですね。
兎も、猫と印象がダブルと聞いたこともあります。
猫には、神と悪魔の二つの側面をよく指摘されます。
そして、救いの神と裁きの悪魔は、ともに神の眷属なのです。
さらにいえば、救いの神であるはずのイエスは、一方で最後の審判では裁きの神として再臨します。
陽の狐を救いの神とし、陰の狸を裁きの悪魔として対を考えたなら、猫は一身でその両者を兼ねる存在です。
二股の尾を持つとされる猫又は、猫の持つ神と悪魔の二面性の象徴の妖怪と、以前、見ましたね。
稲荷(INARI)の読みがINRIに通じるところから、両者を混同して論じる議論が見られるが、稲荷の狐までイエスに重なって見えてしまう…。
INRIとは、“IESVS NAZARENVS REX IVDÆORVM”の略です。
INRIとは、古典ラテン語で、“イエス ナザレの人 ユダヤの王”という意味です。
そして、稲荷は秦氏の氏神と見られています。
その秦氏には、ユダヤ人キリスト教徒説があるのは、やはり偶然で片づけられそうもないですね。
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コメント
赤は火ではないかと思います。青は水。黄色は…土?
投稿: まるこ | 2012年1月22日 (日) 03時23分
ええ、陰陽では色はこういう配当になります。
黒=水、赤=火、青=木、白=金、黄=土
詳しく言えば、もっとあります。
煩雑さを避けるために省きますが。
投稿: cova | 2012年1月22日 (日) 20時02分
「赤」=「鉛を煮立てた色」なのだと思います。
鉛はアルファ線とかベータ線とか「放射線を遮る効果」が高かったろうと思います。
昔の人はそうした効果を「魔除け」にしたのだろうな…と、私は思っています。
投稿: カーネーション | 2012年2月 2日 (木) 08時42分
鉛丹(えんたん)は、光明丹(こうみょうたん)、赤鉛(せきえん)、赤色酸化鉛(せきしょくさんかなまり)とも呼ばれますね。
鉛丹は、鉛が名前にあるように、四酸化三鉛(Pb3O4)を主成分とする、赤色の無機顔料です。
鉛丹が主原料の塗料で、日本の平安時代の建築物の朱色の柱は塗装されています。
鉛に遮蔽の力があるのは、確かです。
古代の知識や技術は、今日の私たちが考える以上の水準にあることは、確かに注目されてきました。
だが、いにしえの人が鉛の遮蔽効果まで、知っていたか、理解していたか、となると、想像の域をでません。
解釈としては、面白いとは思いますが。
投稿: cova | 2012年2月 2日 (木) 10時39分
聖書のどこかに再臨する時のイエスは赤い服を着ていると書かれてますね。
地球はノアの洪水で水によるバブテスマを受け、この世が終わる時には火で焼かれ火によるバブテスマを受けます。
そのへんが鳥居の赤い色と関係しているのではないでしょうか。
鳥居の赤い色は朱色ですね。
朱色は主(イエス)色かもしれません。
投稿: ペプシコーラ | 2012年7月11日 (水) 04時01分
黙示録でしたかね。
イエスは赤い衣をまとってメルカバーに乗っているとあるでしょ。
ヤハウエיהוהをさす一文字“ה(へー)”を筆記すると、鳥居にそっくりになるだけでなく、יהוה(ヨッドヘーヴェブヘー)を縦書きしてもそうなります。
「赤い鳥居とキリスト?」で展開したので詳しくはそちらを見てください。
http://cova-nekosuki.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-53c7.html
その鳥居が赤い稲荷とイエスを比べると面白いですね。
稲荷とキリスト?その1
http://cova-nekosuki.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-5436.html
投稿: cova | 2012年7月11日 (水) 10時14分
イザヤ63章にも赤い服の再臨するイエスの話がありますね。
黙示録では再臨するイエスは赤い服を着て白い馬に乗っているようですね。
白地に赤の日の丸の旗は、再臨のイエスの予型というのはどうでしょうか。
投稿: ペプシコーラ | 2012年7月13日 (金) 02時27分
イザヤ63章第1節ですね。
「エドムから来る者、ボツラから真紅の衣を着て来るこの者は、だれか。その着物には威光があり、大いなる力をもって進んで来るこの者は。」「正義を語り、救うに力強い者、それがわたしだ。」
黙示録では19章第11節から13節ですね。
11 また、私は開かれた天を見た。見よ。白い馬がいる。それに乗った方は、「忠実また真実」と呼ばれる方であり、義をもってさばきをし、戦いをされる。
12 その目は燃える炎であり、その頭には多くの王冠があって、ご自身のほかだれも知らない名が書かれていた。
13 その方は血に染まった衣を着ていて、その名は、「神のことば」と呼ばれた。
陰陽では、白は西と死、赤は地と生に配されます。
また、陰陽では馬は午と表し地と生に配されます。
イエスは義の太陽とされる事と合わせると、日の丸の構図と配色にそういう連想が出来るのは面白いですね。
投稿: cova | 2012年7月13日 (金) 12時36分