カーニバルと盆踊り?
謝肉祭と訳されることの多いカーニバルは、もともとカトリックなど西方教会の文化圏で見られる、四旬節の前に行われる通俗的な節期です。
謝肉祭は、各国で次のように呼ばれます。
英語ではカーニヴァル(Carnival)
ドイツ語ではカーネヴァル(Karneval)、ファシング(Fasching)、ファストナハト(Fastnacht)
スペイン語ではカルナバル(carnaval)
イタリア語ではカルネヴァーレ(carnevale)
フランス語ではカルナヴァル(carnaval)
ポルトガル語ではカルナヴァウ(carnaval)
ハンガリー語ではファルシャング(farsang)
ポーランド語ではカルナヴァウ(Karnawał)
アイスランド語ではキョトクエズユハウティド(kjötkveðjuhátíð)
四旬とはもともとは40日のことだが、日曜日を除いて40日を数えるので、日曜日をくわえると実際は46日となります。
日曜日はイエスの復活を記念する喜びの日なので、四旬節の40日にはカウントされないのです。
四旬節は、カトリック教会などの西方教会において、復活祭の46日前の水曜日(灰の水曜日)から復活祭の前日(聖土曜日)までの期間のことです。
なお、聖公会では「大斎節」と呼び、プロテスタントの教派によっては「受難節」と呼ぶこともあります。
四旬節では伝統的に食事の節制と祝宴の自粛が行われ、償いの業が奨励されてきました。
伝統的に、四旬節の節制は、祈り、断食、慈善の3点を通じた悔い改めの表明と解されます。
現在の多くの西方教会の教派では、神に対しての祈り、自分自身に対しての節制、さらに他人に対する慈善の3つが四旬節の精神であるとして教えられています。
もちろん、伝統的な考え方を否定するわけではないといいます。
現在でも一部の信徒たちが娯楽の自粛や慈善活動への積極的な参加を行っているそうです。
一方、東方教会の諸教派では、現在も、慈善の奨励や四旬節に固有な悔い改めを促す種々の祈りとともに厳格な食事の節制が行われます。
四旬節の日は、年によって一定ではありません。
復活祭は3月22日から4月25日のいずれかの日曜日なので、四旬節は2月4日から3月10日のいずれかの日に始まるのです。
四旬節は、正教会の「大斎(おおものいみ)」に相当します。
もっとも、正教会における大斎の始まりは、日曜日日没であることや、東方教会の復活祭の日付は西方教会と必ずしも一致しません。
ちなみに、教会暦は日没を一日の境目と捉えます。
そこで、日曜日日没から月曜日と数えるのです。
大斎と四旬節は、年によって1週から5週ほどのずれを生じていることなどにより、期間には相違がでてしまうのです。
40は聖書では、ノアの洪水や、出エジプト、イエスの断食などで出てくる数字ですね。
四旬節の語源は、ラテン語の40を意味するクアドラゲシマで、元は初代教会で復活祭前に行っていた40時間の断食の事だったと言います。
四旬節は本来、復活祭に洗礼を受ける求道者のために設けられた期間だったのです。
復活徹夜祭には成人の洗礼を行うのが初代教会以来の慣習であり、受洗者たちも初聖体に備えて40時間断食を行っていました。
後に、聖金曜日から復活祭までとされたこの40時間は、6日間に延ばされ、さらに延びて6週間の洗礼準備が行われるようになったようです。
4世紀の終り頃のエルサレムでは復活祭前の7週間、毎週3時間の受洗準備が行われていたという記録があるそうです。
4世紀に入ってキリスト教が公認されると、受洗者の数が激増したため、従来、求道者のみに課していた復活祭前の節制の期間を全信徒に対して求めるようになったわけです。
これが四旬節の起源とされます。
四旬節中には厳格な断食をなすという習慣は、古代末期から中世にかけて確立したそうです。
肉はもちろん卵、乳製品の摂取が禁じられており、一日一度しか十分な食事を摂ることができないとされました。
その四旬節の前の行事だから、カーニバルは謝肉祭と訳される。
そうなるでしょうね。
今日では、社会の変化により、西方教会においてはそのような厳格な実施は求められていないようです。
現代のカトリック教会における四旬節中の節制は、以下のようなものといいます。
まず、教会法1251条によって対象となるのは、18歳から60歳までの健康な信徒である。
教会法1253条は大斎の実施については各国の司教団の決定に従うよう書かれている。
基本的には大斎の日には一日一度十分な食事をとり、あとの2回は僅かに抑える。
大斎の日には肉を摂らないという小斎も同時に行われる。
現行のカトリック教会法では、毎週金曜日と灰の水曜日や聖金曜日に小斎を行うというのが基本的な形式だそうです。
カーニバルの語源は、一説によるとに13世紀のイタリア語などラテン系言語の「肉よ、お別れじゃ」という意味のカルネ・ウァレ(carne vale)に由来するといわれます。
ドイツ語のファストナハトなどは「断食の前夜」の意で、大斎である四旬節の断食の前に行われる祭りであることを意味します。
別の説には、謝肉祭は古いゲルマン人の春の到来を喜ぶ祭りがキリスト教の中に入ってきたと見るものもあります。
ゲルマンの農耕祭に登場する船を仮装した山車carrus navalis(車・船の意)が、カーニバルの語源と見るわけです。
もちろん、断食の前という意味の方が古いという研究者もいます。
ゲルマンの祭りが入ってきた当初は、一週間教会の内外で羽目を外した祝祭を繰り返し、その最後に自分たちの狼藉ぶりの責任を大きな藁人形に転嫁して、それを火あぶりにして祭りは閉幕するというのがその原初的なかたちであったそうです。
今でも、大きな人形を燃やす祭りはヨーロッパにありますね。
日本人にもゲルマンの血が入っていると言う人はいるけど、中に明かりを灯す、ねぶたやねぷたの人を描いた大きな山車は、時期は違うけど燃やす人形と起源は似ていますかね。
ヨーロッパには、なまはげに似た風習もあるし、日本にもハロウィンを連想できる行事があるでしょ。
確かに、行列型盆踊りとカーニバルは、奇妙なほど雰囲気は似ているのですよ。
目的が違うから、あまり比較されてこなかったけど。
祭りは本来、霊的な世界との交流や交信としてなされてきたことを想えば、時期や表面的な目的の差にとらわれると本質的な類似が見えなくなる点を見落としてしまうでしょうね。
目的の違いも、無視してはいけないけれど。
仮装したパレードが行なわれたり、菓子を投げる行事などが行なわれてきたことから、現代では宗教的な背景のない単なる祝祭をもカーニバルと称することが少なくないようですからね。
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