中国は分裂前の古代国家か。
中国の多数派を占めるといわれる「漢民族」、じつはかなりあいまいな存在だというのです。
「漢民族とは何者か」
この問いに、答えるのはかなり難しいというのですよ。
古代を大きく引きずり続けた中国はまだ、近代的な意味の「民族」そのものが十分成立していないのかもしれないです。
この問題を考える前に、中国の歴史をおおざっぱに振り返ってみたいです。
その後の中国の歴史の主軸となる黄河文明。
黄河文明が萌芽する遥か前より栄えていた長江文明。
先秦時代といわれる三代、春秋戦国。
三代とは、夏・殷(商)・周。
春秋戦国は、都市国家の盟主どうしの戦いで、最終的に趙、魏、韓の三国が出来た。
秦帝国、秦王政は、他の6つの列強を次々と滅ぼし、紀元前221年には史上はじめての中国統一を成し遂げた。
漢帝国 、秦が滅びたあと、劉邦と項羽が争った楚漢戦争で、紀元前202年に劉邦が項羽を破り、漢の皇帝となった。
魏晋南北朝時代、後漢末期の184年には、農民反乱である黄巾の乱がおき、隋が589年に中国を再統一するまで、一時期を除いて中国は分裂を続けた。
隋帝国、江南・華北を結ぶ大運河を建設したり、度重なる遠征を行ったために、民衆の負担が増大したため農民反乱が起き、618年に隋は滅亡した。
唐帝国、618年に成立した唐は基本的に隋の支配システムを受け継いだが、907年、節度使の1人である朱全忠によって滅んだ。
五代十国、唐の滅亡後、各地で節度使があい争った時代。
宋、960年に皇帝となった趙匡胤により、この戦乱は静まったが、1279年広州湾の厓山で元軍に撃滅され滅びた。
モンゴル帝国、モンゴル高原の遊牧民を統合したチンギス・ハーンが1206年に創設した遊牧国家だが、1368年、紅巾党の首領のひとりであった朱元璋の立てた明によって中国を追われた。
明帝国、明朝ともいい、1368年から1644年にわたって中国を支配した中国の歴代王朝の一つ、大明と号した。
清帝国、清朝ともいい、1636年に満州において建国され、1644年から1912年まで中国を支配した最後の統一王朝。
民族という言葉は、実はかなりあいまいな使い方をされているのです。
大辞林と大辞泉の例を挙げます。
〔大辞林〕
「われわれ…人」という帰属意識を共有する集団。
従来、共通の出自・言語・宗教・生活様式・居住地などをもつ集団とされることが多かった。
民族は政治的・歴史的に形成され、状況によりその範囲や捉え方などが変化する。
国民の範囲と一致しないことが多く、複数の民族が共存する国家が多い。
〔大辞泉〕
言語・人種・文化・歴史的運命を共有し、同族意識によって結ばれた人々の集団。「騎馬―」「少数―」
一般に、中国の多数派である漢民族という場合、「言語・人種・文化・歴史的運命を共有し、同族意識によって結ばれた人々の集団。」 の意味であると思われるのです。
見ればわかるように、「文化的共同体としての民族」と「政治的共同体としての民族」がごっちゃになっているのです。
この「文化的共同体としての民族」は、欧州では“ethnic group”として扱われるようです。
いっぽう、近代国民国家の成立の背景となる「政治的共同体としての民族」は“nation”と呼ばれるようですね。
「文化的共同体としての民族」がもとになって、「政治的共同体としての民族」は生まれてくるのです。
その「政治的共同体としての民族」は、中国にはまだ十分育っていないと見たらどうでしょう。
歴史を見ればわかるように、中国には古代史のレベルの展開は豊富にあっても、中世史のレベルの展開はきわめて乏しいのです。
この、中世こそが、近代的な意味での民族を成立させるのに欠かせない歴史といえるのです。
そして、この近代的民族こそ「政治的共同体としての民族」である“nation”なのです。
古代国家は、“nation”にもとずく国家でないことは、中国史ひとつとってもわかっていただけるでしょ。
そのことも、「漢民族とはなにか」が見えにくくしている原因のひとつかもしれないです。
つまり漢民族は、「文化集団としての民族=ethnic group」であって、「近代国家の主体としての民族=nation」ではないとこが、中国の近代化を進める中でこれから大きく足かせになるかも知れないというわけです。
この問題で北京政府が無理すると、民族国家を求める動きが激しくなって中国はこれから分裂の可能性が深刻化することが心配されます。
そもそも中国はその大きさからしても、ひとつの国家としてまとめるのには無理があると思うのですが。
それに、「漢民族」と言う場合、いつもその対極に「少数民族」の存在があるわけでしょ。
いいかえれば少数民族の存在ゆえに全土98%を占める漢民族がやっとその存在意義を認められるのであって、はて、実態となると、ないのかもしれませんね。
少し違うかもしれないけれど、昔中国の友人が「中国人は12億粒の砂、絶対ひとつにはまとまらない」と自虐的に言っていたけれど、少数民族を除く中国人の民族意識ってどうなんでしょうね。
漢民族自体、沿岸内陸での格差や、辺境他民族地域への浸出行為からして、存在そのものが(ethnic groupですら)怪しすぎますね。
単に、People's Republic of Chinaが居所な人々に過ぎないのでは、と、思いつつあります。
あれだけの人数をまとめるにはキチンとした政治とか、高いモラルが必要になるでしょ。
数えられてないだけで、中国の山奥や秘境には、もっと人口が多く存在してるかも…なんて思っていました。
連邦になる場合、国家連邦か、連邦国家か、混乱なく変更できるのか、てな課題を抱えてしまうのです。
砂のような民といえば、アラブの遊牧民もそういわれる気がします。
漢民族は、現地では漢人といってるらしいです。
漢人をギリシャ語にして、中国語に戻すと漢教徒ともなるかもしれないです。
つまり、自らを漢人と思えば漢人になるということでは、ethnic groupといってもいいかもしれないです。
中国製の食品の安全性や、製品についてのモラルについての報道は、中国について疑問が増えちゃうものが多いなんて今ひとつ、いやですねえ。
土地の広さ、人口の多さで大味になってしまうのでしょうかね。
そういえば、中国も、ロシアも、アメリカも、程度の違いはあってもどこか大雑把なことは、共通してる気はしますね。
アメリカなんかは、ヨーロッパからの移民も、大勢いるはずなのに…・
ヨーロッパの国々は、日本とあまり変わらない面積なせいか、確かに繊細さはあるように感じます。
中国まとめるって、北京市だけでも広いのに…。
料理だって何種類もあるし…・
すごく大変なことね。
中国は連邦制になるべき、という声もあります。
それも、仕方がない気はします。
けど、連邦制の採用は一歩間違えると、クルド問題を抱えるトルコやイラクなどから、よこやりが入る事も考えられるのです。
私はそれが心配なのです。
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コメント
指摘されているとおりであろうと思います。わたし自身は現在の中国は古代国家であろうと思っています。司馬氏の言を待つまでもなく清王朝から単に共産党王朝になったと理解しています。このことは、わたし個人の意見ですが「人類の潜在的脅威」であろうと思っています。これはかれらの台頭と覇権を許した場合、世界の時間を200年はもどしてしまうインパクトがあるからです。
投稿: Takami | 2015年7月15日 (水) 00時43分
中世を経て近代化した、日本や欧州は、一皮むけばまだまだ民衆レベルでは中世が顔をのぞかせる場合が多いようです。
もしそうなら、中国は一皮むけば古代帝国時代の意識や感覚や感性が、顔を出すことになるでしょうね。
当人たちに、まだまだ古代帝国時代の意識や感覚や感性が残っていると言う自覚があれば良いけど、おそらく今の自分は古代帝国時代のモードであるかどうかなんて意識してないでしょうね。
今の日本の政治家で、そこを十分理解したうえで上手に付き合える接点を探そうとしている人はどれだけいるか、ちょっと心配です。
投稿: cova | 2015年7月16日 (木) 18時18分