ロードピス―古代エジプトのシンデレラ。
世界中に、シンデレラのバリエーションといえる話が残っていると指摘されるのです。
そういえば、中国や日本にもあるのよね。
中国では、唐の時代に楊貴妃がモデルと言われる「掃灰娘」という類話があるのですよね。
「掃灰娘」といえば、基づいていると思われる唐代の小説「葉限」などの類話があるのでしたね。
楊貴妃と言えば、蜀の出身ね。
蜀と日本には、繋がりが見えたのよね。
山田仁史の「台湾のシンデレラ?」という記事が、篠田知和基編『愛の神話学』(楽瑯書院 2011)に収録されているそうですよ。
台湾か、それは興味深い。
大陸から民話の伝わった地域の一つが、台湾なのでしょうか。
中国と日本の間にあるだけに、気になりますね。
今回注目したいのは、シンデレラに似た話が中東のエジプトにあることです。
"The Egyptian Cinderella"とも言い得る、ギリシャの歴史家ストラボンが紀元前1世紀に記録したロードピスの話があるというのです。
これは、現在知られている中でもっとも古い記録の一つに挙げられると言うのです。
ロードピスというと、どういう意味でしょう。
バラの顔と言う意味だそうで、ヨーロッパや中国の類似の物語にある灰とは関係ないですね。
そうなると、灰が付く名前で呼ばれるようになった背景は、やはり聖書と何らかのかかわりがあるのでしょうか。
可能性は疑って良いけれど、裏を取る必要はありますね、
ロードピスの話は、こう言う筋書きだそうです。
エジプトのお屋敷に、美しい女奴隷ロードピスが住んでいた。
主人は優しい人だったが多くの召使いに十分目が届かず、肌が白く外国人のロードピスはまわりの女召使いからよくいじめられていた。
あるとき、ロードピスが上手に踊るのを見た主人はロードピスに美しいバラの飾りのついたサンダルをプレゼントした。
すると他の女召使いたちは、ロードピスに嫉妬していっそう彼女につらく当たるのだった。
その後、エジプトの王様が民衆を首都に招き、大きなお祭りを催した。
女召使いたちはそのお祭りに出かけていったが、ロードピスにはそのお祭りに行けないようにたくさんの仕事を言いつけた。
仕方なく言いつけどおりオルモク川で服を洗っていると、バラのサンダルを誤って濡らしてしまう。
そこでそれを岩の上で乾かしているとハヤブサが持っていってしまい、それをメンフィスにいるファラオの足元に落とした。
そのハヤブサがホルス神の使いだと考えた王様は、国中からそのサンダルに合う足の娘を探し、見つかったら結婚すると宣言した。
王様の船がロードピスの住むお屋敷にやってくると、ロードピスははじめ身を隠してしまったが、サンダルを履かせるとぴったりあった。
またロードピスが残していたサンダルのかたわれも見つかり、王は宣言どおり、ロードピスと結婚した。
主人公のロドービスは、色の白く美しい外国人の女奴隷だったという設定が、私たちの知るシンデレラと決定的に違うのです。
どうして、奴隷になったのかなあ。
さあ、まだ、そこまでは調べてないです。
それに、元の物語にそこまでの記述があるかどうかも、疑問が残るのです。
この物語が生まれたころには、言うだけ野暮だったのかもしれません。
私たちが知っているシンデレラは、細部は異なるものの、大筋としては以下のとおりです。
シンデレラは、継母とその連れ子である姉たちに日々いじめられていた。
あるとき、城で舞踏会が開かれ、姉たちは着飾って出ていくが、シンデレラにはドレスがなかった。
舞踏会に行きたがるシンデレラを、不可思議な力が助け、準備を整えるが、12時には魔法が解けるので帰ってくるようにと警告される。
この不思議な力は、話によって、魔法使い、仙女、ネズミ、母親の形見の木、白鳩など、さまざま。
シンデレラは、城で王子に見初められる。
12時の鐘の音に焦ったシンデレラは階段に靴を落としてしまう。
王子は、靴を手がかりにシンデレラを捜す。
姉2人も含め、シンデレラの落とした靴は、シンデレラ以外の誰にも合わなかった。
シンデレラは王子に見出され、妃として迎えられる。
こうしてみると、17世紀の南イタリアでバジーレによって書かれた灰かぶり猫(Cenerentola)は、主人公の殺人から話が始まる点で、明らかに異質ですね。
ナポリ方言で書かれた民話集のPentamerone(ペンタメローネあるいはペンタメロン)に、1日目第6話として納められているそうです。
Pentameroneは、五日物語という意味だそうです。
中東から地中海にかけて、似たような題の物語形式が流行ったのかなあ。
日本では千夜一夜物語として知られる千一夜物語があるでしょ。
こう言う構成は枠物語に分類され、起源は、わかっている中で、紀元前1千年紀の古代インドにまで遡ることができるそうですよ。
バジーレの作品の最大の特徴は最初にゼゾッラが最初の継母を衣装箱に挟んで首を折って殺害する場面があることです。
このシーンは、グリム童話の1つである「ねずの木」と似ていると指摘されるのです。
ただし、「百槇の話」としても知られる「ねずの木」では、継母に先妻の子である男の子が殺されてしまうが、継母が復讐される顛末は共通です。
この、「ねずの木」も興味惹かれるけど、今回は深入りしないです。
バジーレは灰かぶりや灰かぶり姫と呼ばれる物語に、なぜ灰をかぶったのかという説明を加えたかったのでしょうか。
一連のシンデレラ物語の中で、異質には違いないけど、理由は謎ですね。
ただ、旧約聖書の時代から、舞台となった地域の周辺の世界では灰をかぶって悔い改めるというのは最上級の心からの悔い改めを意味していたようです。
その最上級の心からの悔い改めを必要とした罪として、殺人を設定したと見ても良いのかもしれません。
さらに情報を集める必要があるので、推定に止ますけど。
五日物語の作者であるGiambattista Basile(ジャンバティスタ・バジーレ)は、17世紀初めにナポリ王国の軍人・詩人です。
各地を旅する中で、シンデレラの物語に原罪としての殺人を持ち込む着想を得たことは、十分あり得るかもしれないです。
継母からのいじめと復讐という構図が似ている、「ねずの木」から手法を転用したと見たくなるのはごく自然でです。
主人公の救いに鳥が関わる展開まで、似てるのですからね。
どこまでも、想像ですけどね。
シンデレラの物語は、ヨーロッパばかりか、中国、さらには台湾、日本と広がっているわけです。
原作は、中東で生まれたと、想像できませんか。
楊貴妃の出身は、蜀ですね。
この蜀については、中東から来た人々である可能性を、考えたことがありました。
そして、エジプトにも類似の物語があるのは、偶然ではないでしょ。
蜀の字は、目と屈んだ姿と虫です。
虫を蛇と見れば、とぐろを巻いて頭をもたげた姿にも見えるのね。
「虫」は、「蟲」が旧字です。
虫は、人や獣や鳥以外の、小動物全般を指すのよね。
特に昆虫だそうです。
「ホルスの目を差し出す蛇神ネヘブカウ」は、まさに蜀の字の格好そのものです。
世界で言う三大美人は、クレオパトラ7世、ヘレネ、楊貴妃です。
日本では、ヘレネの位置に小野小町を数えるのですけどね。
そして、この4人の美人の共通点として浮かび上がったのが、ギリシャでした。
そうなると、エジプトのシンデレラと言えるロードピスの出自は気になるのね。
色の白いエジプトにいた外国人の美人となると、地理的に言ってもギリシャは疑って良さそうですね。
ギリシャ神話とエジプト神話は、305年頃、ギリシャのプトレマイオス一世王朝創始の辺りから混じり合うのでしたね。
物語の成立した時代、エジプトにいたギリシャ人の中にもロードビスのような、奴隷に身を落とした人はいたかもしれないですね。
どこまでも、仮定ですけどね。
ロードビスの話が、エジプトから、ヨーロッパや中国や、さらには台湾や日本に伝えられたと見て良いのでしょうか。
ギリシャ人の影響を強く受けた人々が、エジプトから各地へと広めたのでしょうかね。
シンデレラは、謎が多いです。
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