味噌とチーズ。
ヨーグルトは、食べて良し、和えて良し、スープで良し。
こうやってみると、けっこう使える食材です。
日本に対抗できる食材がありましたっけ。
ありますよ。
味噌です。
面白いことに、ヨーグルトと味噌は、動物性と植物性の差こそあれ、たんぱく質が豊富な材料から作られる発酵食品という共通点があります。
ここでは味噌との比較のために、プレーンヨーグルトを例にとります。
プレーンヨーグルトは、糖や香料など添加物を一切加えず、生乳などの乳製品つまり成分を乳酸菌だけで発酵させたものです。
原材料を混合、撹拌し、殺菌後、スターターとなる乳酸菌を添加し、その後すぐに容器に充てんし、容器内で発酵させます。
もちろん容器に充填された後は、雑菌が入らないように管理される必要があります。
ちなみに、チーズとヨーグルトの差は、凝乳酵素で固めるかどうかにあります。
チーズを作る際、ホエー(乳清)も取れます。
ホエーは、下ごしらえに使ったり、味を調えたりと、調味料的な用途があるので、どこか醤油に似ていますね。
ホエーが、醤油やソースのように、各人の好みの味付けのために食卓に乗るかどうかは、まだ確かめてません。
味噌の主材料は、畑の肉とも称される大豆と、米あるいは麦、そして塩と水です。
ヨーグルトと違って、主材料は固形なので水につけて蒸す必要があります。
さらに米あるいは麦に麹菌をつけて、米麹や麦麹を作る手間が加わります。
大豆に、麹と塩と酵母を混ぜて仕込み、発酵、熟成させます。
ホエーがチーズの副産物なのに対し、醤油を絞った残りが醤油粕です。
醤油と製法が似ているのが、日本酒です。
まず、醤油の製法です。
丸大豆、もしくは、脱脂加工大豆に炒めた麦を加えたものに麹菌を加え三日かけて製麹(せいぎく)し、原塩を溶かして作った食塩水を加えて仕込みます。
こうしてできたものが、もろみであり用途はクリームチーズに近いかも知れません。
ただ、クリームチーズに茶漬けのような用途があるかは、知りません。
もろみを胡瓜に付けて食べるから、もろきゅうと呼ばれるので、味噌をつけて食べた場合は、正式にはもろきゅうではありません。
醤油を絞ると、醤油粕が出来ます。
だが、酒粕がホエーをとった後のチーズ同様に人間の食用となるのに対し、醤油粕は全て畜産の飼料に利用されていました。
醤油粕にも醤油同様に窒素分などの栄養素が含まれており、有効利用だったわけですが、最近は全てを飼料に利用することが難しくなってきています。
それは、畜産動物の用途ごとに配合飼料が低価格で供給されるようになってきたこと、また畜産農家が醤油工場よりも遠隔地にあることなどが原因です。
そのため、醤油業界においては、工場の熱源に利用したり、古紙に混ぜて紙として再利用、 バイオなどにより利用価値の高い飼料、肥料に利用するなどの取り組みをしています。
醤油粕は飼料にされてきた点では、ワインを絞った後のワイン粕と用途が似てますね。
日本酒作りは、精米といって米の表面に集中する糠(ぬか)を削って精白する作業から始まります。
酒に必要なのは芯白に含まれる澱粉なので、米粒の外側に多く含まれる蛋白質・脂肪は雑味の原因となるため、米が砕けないよう慎重に削り落とされます。
精米後は、洗米、浸漬、甑(こしき)という杉製の桶で蒸米され、麹用と仕込み用に分けられます。
麹は麹菌による発酵で作られ、酒母ともろみを作るために用いられます。
酒母とは、蒸し米、麹、水、酵母を混ぜ合わせて酵素や菌の働きで分解、発酵を進め、不必要な雑菌を淘汰した粥状の発酵スターターのことです。
酒母を蒸米、麹、水とあわせて、もろみをつくります。
桶やタンクの中で発酵させることを「仕込み」、使う水を「仕込み水」といいます。
仕込みは腐造(ふぞう)を防止するために4日に分けて「添え」「仲仕込み」「留め仕込み」の3回行うことから、「3段仕込み」といいます。
こうしてできた、もろみを酒袋に入れて搾り、酒粕と液体に分けることを上槽といいます。
こうしてできた新酒が、濾過、火入れ、貯蔵を経て原酒となります。
実際の出荷は、割り水といい出荷の前に仕込みを加えてアルコール度数を整える過程が仕上げに加わります。
こうしてできた日本酒は、飲用はもちろん、調理の味付けに使われてきた点で用途がワインに似てます。
本来水分を含まないはずの米から、手間暇かけてまで、なぜ、日本酒を造ろうとしたかですよ。
その理由は、日本酒がライスワインとして紹介されることが、物語っているかもしれません。
故郷で飲んでいた、ワインがどうしても恋しかった。
そうでなければ、どうしてわざわざ、手間暇かけて仕込むでしょうか。
今では炊くのが当たり前の米だが、かつては、蒸すのが当たり前だったそうです。
蒸した米が発酵して酒が出来ると知って、腐敗させない方法を試行錯誤で編み出したのかも知れないですね。
味噌の話だったでしょ。
ヨーグルトやチーズは、菓子やつまみとしてそのままでも食べるけど、味噌はどうでしたっけ。
味噌を主原料にした、味噌せんべいという瓦せんべいの一種ならあるそうだけど、味噌はほとんどの場合味付けに使われるようですね。
そういえば、肴として売られている場合でもほとんどは味噌漬けですね。
しいていえば、味噌を肴に酒を飲むという話が徒然草に載っているそうですけどね。
http://e-satoken.blogspot.jp/2009/05/blog-post_18.html
もろみ味噌に生胡瓜をつけて食べるもろきゅうは、酒の肴としても美味いそうだから、味噌だけでも十分いけるのかもしれません。
徒然草には、「心よく數獻(すこん)に及びて、興に入られ侍りき」つまり、気持ち良く数杯は傾け合って十分楽しんだとあるといいますから。
チーズにも、香りを楽しむものがあるし、味も濃厚な種類がある事を思えば、案外、味噌だけでも肴としていけるかもしれないですね。
味噌は、和えて良し、スープで良し、もっと、ヨーグルトやチーズの代わりとして、産地それぞれの味を生かして売り込んでも面白い食材でしょうね。
イタリア料理はもちろん、産地によっては、フランス料理にも、生かせるかも知れないですよ。
今回は、なんと、味噌からヨーロッパとの繋がりが見えてきたと言いたいのですか。
手前味噌、と言いたそうですねえ。
もちろん。
やっぱり、味噌が付きますか…。
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コメント
両方とも健康によさそうですね。
今晩の食事に取り入れてみたいです。
投稿: starfield | 2013年1月 7日 (月) 11時46分
どっちも、美味しいですよね。
投稿: cova | 2013年1月 7日 (月) 14時49分