円空仏に風が吹く?
東京国立博物館140周年特別展「飛騨の円空―千光寺とその周辺の足跡―」を、見ました。
円空仏は、荒々しいだけじゃないですね。
意外と、繊細です。
顔はもちろんだけど、ちゃんと仏像全体のバランスが取れてます。
一目見て感じたのは、円空仏は、明らかに、一種の抽象的造形ということです。
仏の本質を必死に捉えて、伝えようとしてる。
そう感じられるのです。
円空は、何よりも、僧だったのです。
彼にとって、仏像を彫る事も説法なのだったのでしょう。
円空の説法を、今の私たちも、円空仏から聞ける、そういうことですか。
だとしたら、私は、それを、聞きたい。
その気になって、素直な心で向き合えば、聞こえて来るかも知れないですね。
私は、感じます。
円空仏には、気がある。
生命力、だけじゃない。
強力なメッセージを、表現してる。
円空は、仏像に、命を表現したかったのだろう。
言葉にすると、ちゃんと伝わっているか、もどかしいですけどね。
こうも、感じました。
空仏の造形は、日本だからこそ、生まれた形だろう。
日本の仏像は、何かが、違う。
日本の仏像は、周囲に、何かがある。
文章で言えば、行間とも言える。
外国にも仏像がある、というより、外国から仏像は伝わってきたわけです。
でも、日本の仏像は、何かが違うのです。
円空仏は、極端に単純化されてます。
その円空仏が、どうしても省けなかったもの、それは仏の衣でした。
裸じゃ、まずいでしょ。
それはそうだけど、衣は、仏であることを、象徴する大事な要素でしょ。
そこで、円空は、仏の衣を裾の単純な造形で表します。
衣の裾が作り出す三つの三角で、円空は見事に仏の衣を生き生きと表現します。
衣自体の裾が作り出す三角の数は、ほぼ三つ…。
袖の裾などが混ざったりして、実際にはもっと多く見えてる場合もありますけどね。
でも、三つくらいが、少な過ぎず、多過ぎず、ちょうど良い。
そういうことかも知れないですね。
三という数は、三尊、三界、三千世界など、仏教でおなじみの数でもあるけれど。
言い換えれば、仏像の衣の裾の形は、それくらい強烈な印象を私たちに与えているのです。
外国の仏像の衣の裾で、この印象的な形を見ることは、少なくとも私にはできていません。
それは、つまり、日本の仏像は生き生きしてるということ。
そうかも知れません。
造形された当時の色彩や金箔は、大半が失われているのにもかかわらず、日本の仏像はどこか生き生きしてる。
それは、仏像の周りに、小さな風が感じられるからかも、知れません。
日本の仏像は、じっとしてるように見えて、実は動いている…。
本当に動いていたら、えらいことですけどね。
動いているように表現する、伝統があるということでしょう。
仏は、生きておられる。
これが、日本の仏像や仏画の、そして、円空仏のメッセージ。
風を声と見れば、こういうことかも知れません。
天地のすべてを作り動かしておられる根源のお方の声は、常に私たちに語りかけておられる。
聖書の、神は生きておられる、という言葉に似てきますね。
仏の助けにすがる気持ちは万国共通でも、仏は生きておられるという発想を、仏像や仏画に表現しようととしているのは、日本くらいではないでしょうか。
ほとんどの国で、有難い御利益を下さる神仏の像を、伝統にのっとって表したり、親しみを込めて表すことはあっても、生き生き表現しようと言う発想はない。
そう思えるけど、どんなもんでしょ。
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