これだから、猫と科学は止められない。
ちょっと古いネタだけど、猫と科学の好きな私としては、壺にはまった記事がありました。
なお、この記事で紹介されている「最新デジタル宇宙大百科」は、アストロアーツ オンラインショップでは完売したが、全国の書店、ネット書店、望遠鏡ショップなどで買えるそうです。
めったにない偶然の産物、猫型天体
【2005年11月29日 Chandra Photo Album】
大マゼラン雲にある超新星残骸DEM L316の可視光写真に、NASAのX線観測衛星チャンドラによるX線画像を重ねると、猫のような姿が浮かび上がった。左上の顔の部分には耳があるように見えるし、右下の胴体の部分には、長いしっぽがついている。もっとも天文学者がこの画像に着目するのは、猫が好きだからではなくて、DEM L316が異なる2つの超新星残骸が重なって見えている、非常に珍しいものだからだ。
超新星残骸 DEM L316が左上の「猫の頭」と、右下の「猫の胴体」の2つに分かれているのは明らかだ。それぞれ異なる超新星爆発によってつくられた残骸である。これほど近くに残骸が並んでいるとは珍しい、爆発で吹き飛んだガスが衝突を起こしているのでは……と思いたくなるが、どうやらそうではなさそうだ。
チャンドラのX線による観測では、猫の頭にあたる残骸からは胴体の部分に比べてかなりの量の鉄が存在することがわかった。これはIa型超新星と呼ばれるタイプの爆発の結果と考えられる。白色矮星と普通の恒星が非常に接近した連星では、白色矮星へガスが流れ込み、臨界に達して暴走的な核融合反応が起きることがある。これがIa型超新星だ。
一方、猫の胴体にあたる残骸は鉄が少ないなどの特徴からII型超新星と見られている。太陽質量の8倍以上の恒星は最後に重力崩壊を起こして大きなエネルギーを解放するが、II型超新星もこうした超新星爆発の一種である。
同じ超新星といってもまったく異なる起源を持つ2つの残骸だが、何よりも異なるのは、元の天体が爆発を起こすまでの時間だ。白色矮星になるのは太陽と同じ程度の質量の恒星で、核融合反応はゆっくりと進むため、反応を終えて白色矮星になるまで数10から100億年以上かかる。それに対して重力崩壊による爆発を起こすほどの大質量星は、核融合も急速に進むので寿命はわずか数100万年だ。
2つの超新星の由来やタイムスケールが全く異なることを考えると、両者がお互いに影響を及ぼすことなく近くで爆発したとは考えにくい。従って、1匹の猫の頭と胴体に見える2つの天体は、実はたまたま重なって見えているだけで、本当は遠く離れているのだ。とはいえ、まったく関係のない2つの超新星残骸が重なって1つの天体に見えること自体、十分珍しいことには違いない。
超新星残骸:超新星の爆発で吹き飛んだガスがつくる残骸。球殻状に広がりながら周囲の星間ガスと衝突し、その衝撃波でガスが加熱されるなどしてX線や電波を発している。かに星雲をはじめとして、はくちょう座の網状星雲、ケプラーの超新星残骸、ティコの超新星残骸などが有名である。(「最新デジタル宇宙大百科」より(一部抜粋))
<参照>
- Chandra Photo Album: DEM L316: Supernova Remnants Deconstructed
<関連リンク>
- チャンドラX観測衛星: http://chandra.harvard.edu/ , http://chandra.nasa.gov
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