花と節句と陰陽と?
春、梅に始まり、桃、桜と続いた赤い花のリレーは、つつじに引き継がれます。
比較的高いところで咲いてきた赤い花は一気に、下界へと舞い降ります。
そのさまはまるで、死の世界であった冬を、まず空で浄め、継いで、地を浄めると言いたげにさえ思えてきます。
この季節はまた、落葉樹たちが芽吹く季節でもあります。
緑は、青とも呼ばれ、一方では黒に準えられる色でもあります。
こう見てくると、五行の青(緑)・紅(赤)・黄・白・玄(黒)のうち、青(緑)・紅(赤)・玄(黒)までが揃うことが見て取れます。
春に咲くのは、赤い花ばかりではないです。
菜の花や山吹、地味ではあるがタンポポもまた、黄色の花を咲かせます。
春に咲く白い花も、こぶし、やまなしのほか、意外と多いです。
春は、植物だけで五行の色が出そろう季節でもあります。
秋もまた、植物だけで五行の色が出そろう季節です。
常緑の青(緑)に混ざって、紅葉や黄葉が彩を添え、さまざまなバリエーションがあるとはいえ緑が目立った山里は、鮮やかな色彩の競演の舞台となります。
葉の色だけで、五行の青(緑)・紅(赤)・黄・白・玄(黒)のうち、青(緑)・紅(赤)・黄・玄(黒)までが揃うことが見て取れます。
唯一揃わない白は、花が提供してくれています。
9月9日の重陽は、菊の節句として知られていたが、新暦のこの頃は菊の季節から外れてしまったので廃れてしまったようです。
実はこの菊こそ、葉の色で唯一揃えられない白だったからこそ、9月9日の重陽は菊の節句だったのではないでしょうか。
こうやって見ると、面白い事に気が付くのです。
1月1日は元旦なので7日にずらされて人日(じんじつ)となって、「七草粥」を食べる日として覚えられているが、花の節句ではないので、今回の考察からは省きます。
3月3日は上巳(じょうし)で、3月の最初の「巳の日」という意味です。
「禊ぎをして穢れを祓い、身代りの人形に汚れをうつして河川・海などへ流す」風習などがあったが、おそらく巳つまり蛇の脱皮にあやかって、汚れを払う縁起が担がれたものと思われます。
冬は、木々も葉を落とし、いくら咲いて彩を添えようと花が頑張ってみても死と眠りの季節の印象は拭えないです。
そして死は穢れともされた事を思えば、汚れの季節から生命の季節である春への脱皮の呪術の流し雛がこの日に行われるのもうなづけます。
流し雛の風習は、江戸時代以降「雛祭り」に姿を変え庶民の間に定着しました。
この日が「桃の節句」でもあるのは、この季節が桃の季節だからでしょう。
桃は赤い花であり、陽の色である赤は炎の色として上巳で脱ぎ捨てた汚れを焼き払う呪術であったのかも知れないです。
5月5日は端午(たんご)で、5月最初の「午の日」という意味です。
古くは「薬草摘みの日」であり薬草としての菖蒲(しょうぶ)が「尚武」の音に通じるとして、男子の立身出世を願う行事へ転化したと見られ、別名「菖蒲の節句」として知られます。
7月7日の(しちせき)の、「笹の節句」とともに、花の節句ではないです
なぜ笹なのかは定かではないです。
中国の「織り姫(織女星)と彦星(牽牛星)」の伝説と、日本の「棚機つ女(たなばたつめ)」の伝説があわさって七夕伝承が生まれたのはよく知られている話です。
9月9日は重陽(ちょうよう)で、「九」という数字は、易によれば「陽数の極」にあたり、これが重なるので非常にめでたいとされました。
中国の風習である、この日に菊の花を飾り、邪気を祓って長寿を祈るというものが元になっており、宮中では重要な節句として位置付けられ、菊を用いることから別名「菊の節句」とも呼ばれます。
白は、陰陽五行では、方位としては西、陰陽としては陰に配されます。
一年と四季の終わりの陰の季節である冬に、同じく陰に配される白の花である菊を対置することでように転化させて、重陽と合わせて幾重にも陽を重ねて邪気を祓って長寿を祈る呪術にしたものでしょう。
もしかすると、菊花紋は古代中東の太陽紋によく似てるから、数ある冬になく花の中から陽の花として菊が選ばれた可能性を考えても面白いです。
こうしてみると、花の節句はたんに美しい花を愛でる日である以上に、汚れや邪気を払いたいという切なる願いの呪術であることがはっきりします。
1月から3月にかけて咲く梅の紅白はかつては、花見の主流であったし、今も多くの人が梅園で花を愛でます。
梅の紅白は、呪術で言えば陽の赤と陰の白で陰陽太極となり、ここから万物が生成するとされる事を思えば、この花が咲く時期が一年の初めの1月に定められたのはただの偶然ではないかもしれないです。
陰陽はカッバーラだとする人たちは、自然界にまでカッバーラが仕掛けられていると言い出すのかも知れないです。
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 聖書は感じ取る方が良いのかもしれません。(2024.12.01)
- なぜ伊勢神宮は世界遺産にならないのか。(2024.11.26)
- 能もまた陰陽である。(2024.11.20)
- 埴輪の向こうに古代中東の姿が透けて見えるのは私だけか。(2024.11.17)
- AIのある未来は、ユートピアだろうか、それとも、デストピアだろうか。(2024.11.15)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 争いを減らすには、まず自分のして欲しくないことは誰に対してもしないことです。(2024.12.09)
- 科学や技術はそろそろ神の領域にどう臨むのか考えた方が良い。(2024.12.08)
- 超巨大ブラックホールの生成する状況を考える。(2024.12.07)
- 日本は古代中東の引っ越し先なのか。(2024.12.06)
- コロンブスの卵をじっくり見てみた。(2024.12.05)
「民俗」カテゴリの記事
- 日本は古代中東の引っ越し先なのか。(2024.12.06)
- なぜ伊勢神宮は世界遺産にならないのか。(2024.11.26)
- アメリカはどこに展望と出口を求めるのか。(2024.11.21)
- 能もまた陰陽である。(2024.11.20)
- 誰もが幸せに生きる理想的な世界を考えてみましょう。(2024.11.18)
「歴史」カテゴリの記事
- 争いを減らすには、まず自分のして欲しくないことは誰に対してもしないことです。(2024.12.09)
- 科学や技術はそろそろ神の領域にどう臨むのか考えた方が良い。(2024.12.08)
- 超巨大ブラックホールの生成する状況を考える。(2024.12.07)
- 日本は古代中東の引っ越し先なのか。(2024.12.06)
- コロンブスの卵をじっくり見てみた。(2024.12.05)
「思想」カテゴリの記事
- 争いを減らすには、まず自分のして欲しくないことは誰に対してもしないことです。(2024.12.09)
- 科学や技術はそろそろ神の領域にどう臨むのか考えた方が良い。(2024.12.08)
- 超巨大ブラックホールの生成する状況を考える。(2024.12.07)
- 日本は古代中東の引っ越し先なのか。(2024.12.06)
- コロンブスの卵をじっくり見てみた。(2024.12.05)
「科学」カテゴリの記事
- 科学や技術はそろそろ神の領域にどう臨むのか考えた方が良い。(2024.12.08)
- 超巨大ブラックホールの生成する状況を考える。(2024.12.07)
- コロンブスの卵をじっくり見てみた。(2024.12.05)
- もはや資本主義を卒業して次の段階に一歩を踏み出した方が良い。(2024.12.03)
- ブラックホールの構造と役割が見えてきた。(2024.11.29)
「言葉」カテゴリの記事
- 争いを減らすには、まず自分のして欲しくないことは誰に対してもしないことです。(2024.12.09)
- 科学や技術はそろそろ神の領域にどう臨むのか考えた方が良い。(2024.12.08)
- 超巨大ブラックホールの生成する状況を考える。(2024.12.07)
- コロンブスの卵をじっくり見てみた。(2024.12.05)
- もはや資本主義を卒業して次の段階に一歩を踏み出した方が良い。(2024.12.03)
「園芸」カテゴリの記事
- 花と節句と陰陽と?(2016.04.15)
- 桜とヤマネコ?(2012.08.04)
- 伝統土木工法から中東が見える?(2011.06.24)
- アサガオやムクゲやキキョウと古代イスラエル?(2010.11.01)
- 弥生人はやはり神武東征と関係あり?(2010.10.23)
「中国」カテゴリの記事
- お互いを知ろうとする忍耐と寛容のいる取り組みを馬鹿にして平和が作れるわけがないと気が付く方が良い。(2023.03.22)
- 蓮華座の仏像と陰陽魚太極図。(2022.09.02)
- 七福神と天の大時計?(2020.07.13)
- 雲南省の少数民族の気になる食文化。(2020.02.13)
- なぜ、卑弥呼と邪馬台国が日本の史書にないのか?(2019.03.04)
「生物」カテゴリの記事
- 縄文犬はどこから?(2024.11.22)
- やはり猫はイエスのメタファーだった。(2024.11.08)
- 国民が声をちゃんと上げるべき時に上げてこそ国は健全になる。(2024.11.07)
- 猫で繋がる古代エジプトと古代イスラエルと日本。(2024.11.05)
- 日本語とラテン語は同祖なのだろうか。(2024.10.29)
「陰陽・弁証法」カテゴリの記事
- ブラックホールの構造と役割が見えてきた。(2024.11.29)
- なぜ波動関数は複素数で表されるのか。(2024.11.28)
- 能もまた陰陽である。(2024.11.20)
- 複素数とは変化の総体に対応する数だ。(2024.11.11)
- 那智大社はなぜこの地でなければならないのか。(2024.11.11)
「アジア」カテゴリの記事
- 縄文犬はどこから?(2024.11.22)
- 日本語とラテン語は同祖なのだろうか。(2024.10.29)
- 熊野の海洋民族も沖縄の民もどこから来た。(2024.08.13)
- お互いを知ろうとする忍耐と寛容のいる取り組みを馬鹿にして平和が作れるわけがないと気が付く方が良い。(2023.03.22)
- 七福神と天の大時計?(2020.07.13)
コメント