ロシアとイエスと?
おそらく多くの人たちが、聞けば耳を、見れば目を、疑うであろうこの言葉は、モルモン教jpというサイトにある記事のタイトルです。
わたしは目の前の「それ」をじっと見つめていました。そしてようやく「ありがとう。」とつぶやくので精いっぱいでした。誇らしげにわたしの面前に立っているロシア正教祭司に対して贈り物をくれたことへの感謝の気持ちを思うように伝えることができませんでした。1992年5月、やや大柄なこのロシア正教の司祭はロシアでのバプテスマ1,000周年を記念するレコード盤を贈り物としてくれました。
文章はこういう書き出しで始まります。
問題はこのレコード盤の表紙にありました。
そのレコーダ版の表紙の絵は、ロシア正教の画家、ミハイル・ネステロフが1,900年ごろ描いた『聖なるルーシ』で、レニングラード、今のサンクトペテルブルクのロシア画廊に現在展示されているといいます。
「それは何を描写しているのですか?」
「わたしたちの救い主が古きロシア、またはルーシを訪れているところです。」…「わたしたち誰もがその話を知っていますよ。」
由来を尋ねると、古代ロシア昔話、イエスが復活後にロシア人を訪れた物語を描いていることを教えてくれたといいます。
「彼の後ろにいる光輪の訪問客はどなたですか?」
祭司は微笑んで、イゴールの通訳を介して「ネステロフは愚か者ではありませんでした。彼は当時の教会の3人の指導者であったペテロ、ヤコブ、ヨハネが立っている様子を描きました。」
著者はメトロポール・ピティリムと呼ばれるロシア正教会の最高権威者、及び教会管理評議会議長である人物にも、この絵について尋ねています。
昼食をすませ、本部のツアーが終わったあとに、わたしは彼にキリストが古代スラブ人を訪れている様子を描いた絵画を知っているか、と尋ねました。彼は知っていると答え、それは特別なレコード盤の表紙に使われており、原画は教会所有の書庫に保管されていることを教えてくれました。私は彼に画家がどこからその場面の構想を得たのかを尋ねました。
彼は厳かにこのように語りました。「その絵はキリストが死後スラブ人、つまりロシア人の先祖を訪れて福音を伝えたという古代昔話に影響を受けています。キリストに耳を傾けたのは農場や田舎にすむ謙遜で身分の低い人たちです。彼らはキリストの名を受けました。その名はキリル文字ではなくわたしたちの文字ではクリスチャニィと音声表記されます。ロシア語で農民のことをクリスチャニィと呼びます。キリストを信じるものは主の名をその身に受けました。」
他の正教会祭司たちからも同じ物語を聞いたというから、ロシアではよく知られた話なのでしょう。
著者はメトロポール・ピティリムにキリストが実際に現在のロシアとウクライナの地を訪れたことを信じているか尋ると、こう答えたそうです。
「その可能性は大いにあります。しかしおそらく使徒アンドレが現在のロシアを最終伝道の時に訪れたのではないでしょうか。しかし、絵画のなかに描かれたとおりかもしれませんね。」
ようは、昔話の通りかもしれないが、使徒アンドレの話が元になっているのかもしれない、本当のところはよくわからないというのが本音なのですね。
アンドレはアンデレとも呼ばれる12使徒のひとりで、小アジアとスキタイで伝道し、黒海に沿ってヴォルガ川まで行ったと伝えられています。そのため、アンデレはルーマニアとロシアの守護聖人になりました。
伝説上ではアンデレはビザンティウムの最初の司教であり、そのため正教会のコンスタンディヌーポリ総主教庁は初代総主教をアンデレとしています。
アンドレの布教がいつの間にか、イエスが訪れた話になったと考えるには、現地の人々には記憶が生々しくて無理がある気がします。
だが、12使徒のひとりとなると、気になることがあります。
何しろイエスは、「異邦人の道に行くな。またサマリヤ人の町にはいるな」と前置きしてこう言っています。
マタイによる福音 10章 6節
むしろ、イスラエルの家の失われた羊のところに行け。
アンデレも12使徒のひとりである以上、その布教先はイエスの指示通りでないといけないはずですよね。
となると、これらの地域はイスラエルの家の失われた羊が確かにそこにいると言えないといけないはずです。
さらに言えば、昔話通りキリストが訪れたとしたら、どうでしょう。
マタイによる福音書 15章 24節
するとイエスは答えて言われた、「わたしは、イスラエルの家の失われた羊以外の者には、つかわされていない」。
アンドレであろうとイエスであろうと、イスラエルの家の失われた羊以外の者にはいかないと聖書にはあります。
スラブ民族はなおのこと、イスラエルの家の失われた羊の可能性が高くなってしまうではないでしょうか。
これらの聖句も、同じことを場面に応じて言い換えていると見るべきでしょう。
ヨハネによる福音書 10章 16節
わたしにはまた、この囲いにいない他の羊がある。わたしは彼らをも導かねばならない。彼らも、わたしの声に聞き従うであろう。そして、ついに一つの群れ、ひとりの羊飼となるであろう。
ルカによる福音書 19章 9~10節
イエスは彼に言われた、「きょう、救がこの家にきた。この人もアブラハムの子なのだから。 人の子がきたのは、失われたものを尋ね出して救うためである」。
なぜ私が、ロシア人、実際には祖先であるスラブ人のもとをイエスが訪れたという昔話にこれだけこだわるか。
それは、日本語はロシア語、トルコ語、朝鮮語の接触と混交から生まれたと主張している笹谷政子著「日本語の起源」に接したからです。
そして、シベリアにアイヌの親戚にあたる民族がいたり、秋田美人にそっくりな人たちが大勢いるという情報に、以前から接しているからです。
さらに言えば、縄文時代のヤマネコの謎を辿ったら、まるで今の中国の版図を挟み込むようにヤマネコ分布が広がっていたが、中東から日本へのルートをなぞっている印象さえ受けたからです。
北回りのルートは、ロシアを横切っています。
ロシアについてもっと情報が欲しいと思っていたところで、この本やこの記事に出会ったのです。
スラブ人の起源はどこにあるのか、なおさら気になってきました。
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