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能もまた陰陽である。

能は、江戸時代になると幕府の式楽として演じられるようになる。

そこで、なぜ能が幕府の式楽とされたのか考えてみる。

 

式楽とは、貴族や武家などの儀式に用いられる芸能のこと。

式楽には、平安時代の宮廷における雅楽や寺社の行事における音楽なども含まれる。

しかし、江戸幕府が猿楽特に能楽を式楽と定めたことから、式楽と言えば猿楽をさすことが多い。

 

能の正式な上演形式は、「五番立」という一日五番と定められている。

能の演目は「神男女狂鬼」、即ち「脇能物」「修羅物」「鬘物」「狂物」「切能物」の5種類に分類されている。

 

この「五番立」に先立って演ずるものと位置付けられるのが、「翁」である。

「翁」は、正式には「式三番」という「能にして能に非ず」と言われる神事・祈祷曲である。

おもに正月や慶事に上演され、国家の安泰や五穀豊穣などを祈念する。

「翁」の構成は大きく分けて、諸役の登場、露払いの舞、白い翁による祝言・祝舞、地固めの舞、黒い尉による祝言・祝舞となる。

 

「式三番」は、あくまでも神事のためとされてすべての演者は精進潔斎をして臨む。

「式三番」というのは、三柱の神からなる造化三神を連想できる。

神聖とされる儀式や行事には、神聖とされる三がしばしば表される。

様々な面で通常の能や狂言とは異なった特殊なもので、能が式楽とされる一番の理由といっていい演目である。

 

秘すれば花と言う能に対して、幕間の狂言は人の滑稽さを即興劇として演じる。

つまり能を陰とすれば狂言は陽となり、通して演じられる舞台全体は陰陽合一の太極を表すことになる。

能と狂言は陰陽合一の太極を表すからこそ、儀式に奉納される芸能の主役となりえたのだろう。

さらに、演目は能と狂言で九つだが「翁」を加えると十になるし、「翁」は「式三番」とも呼ばれるのでそうなると十二となる。

十と十二とくれば、十干十二支も連想できる。

幽玄が注目される能だが、裏には陰陽思想があるとしか見えない。

これは、決して偶然ではないだろう。

以下に、「脇能物」「修羅物」「鬘物」「狂物」「切能物」について説明する。

詳しいことは専門の書やサイトに述べられているので、さらに知りたい人はそちらを当たって欲しい。

今回は、the.comを参照させていただいた。

 

五番立の番組はそれぞれ一曲ずつ選び、「神男女狂鬼」の順に並べて作る。

そして幕間に、狂言が演じられる。

 

「脇能物」は、「神・男・女・狂・鬼」のうちで「翁」の次に最初に演じるべきとされた曲である。

「脇能」という名称は、「翁」の脇に置かれる曲という意でつけられたとされる。

「高砂」「老松」「賀茂/加茂」など、神を扱った祝言性の濃い内容の曲が多いのが特徴となる。

 

「修羅物」は、「二番目物」ともいう脇能に次いで二番目に演じるべきとされた曲のこと。

修羅とは阿修羅の略であり、仏教の世界観では修羅道は常に戦いの続く世界とされる。

戦とともに一生を送り、死後、修羅道に堕ちたとされる武者の姿が描かれることが多い。

「田村」「通盛」「頼政」など男武者が主人公の曲が多いが、「巴」という女武者の曲もある。

 

「鬘物」は、「三番目物」ともいい脇能、修羅能に次いで三番目に演じるべきとされた曲のこと。

幽玄の趣がある美女や天人が登場し、みやびやかな舞を舞う趣向の能が多い。

三番目物には典雅な男性貴族や、神さびた姿で現れる老体の樹木の精が主人公の曲なども含まれる。

 

「狂物」は、「雑物」「雑能」「四番目物」ともいい四番目に演じるべきとされた曲のこと。

「神・男・女・鬼」のいずれにも属さない曲趣のものは、すべて四番目物に入れる。

様々な原因で精神が揺れ動く、いわゆる物狂いの人物の物語が多いことから「狂物」の名称をつけるとされる。

 

「切能物」は、「切能」「五番目物」ともいい狂物に次いで五番目に演じるべきとされた曲のこと。

一日の演能の終わりに演じられるので、物事の終わりを意味する「切り」をつけて「切能」と呼ぶ。

祝意を込めた曲や、見た目の華やかさを楽しめる鬼退治的な物語が多い。すべての曲に太鼓が加わってテンポよく演じられる。

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